なんちゃってパッカーのジレンマ

「自由」というのは、案外面倒なものだ。

 有休が比較的簡単に取得できるサラリーマンにとって、本来自由旅行はいつでも気軽に行けるものであるのだが・・・  「いつでも行ける」ので、ついつい行かないことになってしまう。
 むしろ、パッケージツアーに申し込んでしまえば、退路を断つことになって、必ず旅行にいくことになるであろうけれども。
 思い返せば、前回のベトナム旅行から既に3年近くにもなる。  筋金入りの本格的バックパッカーからは嘲笑されるかも知れないが、私のような「なんちゃってパッカー」には、何か背中を押してくれるものが必要なのだ。

背中を押される出来事は突然やってきた。

 8月初頭に1ヶ月先の東京出張が決まった、しかも金曜日である。
 以前よりノースウェストのマイルが4万マイルほど貯まっていた。  4万マイルというのは微妙な数字で、アメリカ、ヨーロッパへの無料航空券は無理だが、アジアなら十分利用可能である。  しかもNWは東南アジアへの無料航空券も僅か2万マイルで獲得可能だ。
 しかしながら、大阪人である私は関空発着が基本であるため、 関空における米系エアラインのアジア路線の貧弱さ故、なかなかこのマイルは使う機会が無かったまま、貯まった代物である。

 このような状況で降って湧いた東京出張はまさに渡りに船。
早速、成田 ⇔ バンコク便の空席状況を検索してみると、 夏休み期間であるこの時期の日程はほとんど埋まっているのにも関わらず、出張当日の9月2日(金)の夜に出発し、 10日後の9月11日(日)の早朝便で帰ってくる旅程が、唯一利用可能であった。
 すなわち、有休5日を取るだけで10日間の旅程を取れる、私にとって時間を最大限有効活用できる日程が、 ピンポイントで空いているのだ。

「これは旅をしなさいという、天からの啓示に違いない」・・・

 バンコク行きは決心ついたのであるが、10日間全てををバンコク滞在に費やしてもしょうがない。  ここは一つ周辺国に行ってみたい。   周辺国と言って真っ先に思い浮かぶのは、勿論、アンコールワットでお馴染みのカンボジアである。
 ネットでバンコクからカンボジアのシェムリアップへのルートを調べてみたところ・・・  バスを使って陸路ルートがあるようであるが、危険だの、肉体的に過酷など、情報はなかなか萎えさせるものばかりだ。  ただし、空路(片道120ドル程度)を利用すれば、安全面、肉体面は全く問題ないようだ。

 カンボジアとは逆の西側にはミャンマーという国がある。 こちらもそそられるのだが、 ビザの事前取得が必要で、しかも東京でしか取得できないようだ。  ミャンマーは今回は見送ることにしよう。

 カンボジアへの空路移動に心が傾く中で、ふとインドシナ半島地図の上の方を見ると、 そこには「ラオス」という国が・・・

 ラオスか・・・

 どんな国なんだろう。まったくイメージが沸いてこない。  ネットで調べると「何もないけどいい国だったよ」みたいな書き込みが目立つ。  なんとも言えない表現だが、妙にそそられるフレーズだ。
 書店で「○○の歩き方」を立ち読みしてみると、タイからラオスへは陸路で簡単に入国できて、  しかもビザはその場で取れるらしい。 しかも「東南アジアの中では比較的治安が良い」と・・・

 ますます、そそられる。 ここはひとつ、ラオスに行かねばなるまい。

 ラオスにはルアンパバーンという、町全体が世界遺産に登録されている場所があるらしい。  ネット情報曰く、ここに行かないことには、ラオス観光とは言えないくらいの所らしい。 (逆説的に言うと、ルアンパバーン以外には見所がないということらしいのだが・・・)
 ラオスの首都ヴィエンチャンとルアンパバーン間はラオス国営航空というラオス唯一の航空会社が結んでいる。
 ネットで格安航空券を調べていると、「ディスカバリーエアパス」なる国際周遊航空券の情報を入手した。  この航空券はラオス国営航空、バンコクエアウェイズ、シェムリアップ航空3社共同の周遊券で、 3区間以上を購入すれば、国内線は一律50ドル、国際線は一律80ドルとなるのだ。  使いようによっては半額近くになる区間もあり、この航空券を利用しない手は無い。

 一応、ヴィエンチャンからルアンパバーンに往復し、バンコクに戻る3区間プランを考えてみたのだが、 区間表をよく見ると、ヴィエンチャンからカンボジアのシェムリアップに飛ぶ路線があるではないか。  つまり、僅か80ドルを足すだけで、安全な空路でカンボジアに立ち寄ることができるのだ。

ヴィエンチャン ⇒ ルアンパバーン ⇒ ヴィエンチャン ⇒ シェムリアップ ⇒ バンコク

結局、上記の4区間で周遊チケットを設定することにした。  航空券は基本的には現地で十分調達できるらしいのだが、格安チケットは数量限定とのことで、事前予約が無難であるらしい。  日本の代理店で手配してもらうことにした。

 ラオス国営航空の日本における唯一の代理店はジャンピングツアーという会社である。  チケット枚数に関わらず、手数料2千円で手配してくれるので、現地での購入と比較してもそれ程高くはない。  手配を依頼すると2日で手書きのチケットと、ラオス、カンボジアのビザ申請書一式、ガイド冊子も同封してくれた。 とっても親切な旅行会社だ。
 ちなみに、このジャンピングツアーという会社と、ラオス政府観光局は全く同じ住所、かつ同じ電話番号である。  つまり、ジャンピングツアーという会社がラオス政府観光局の委託運営を行っている。  ラオス政府にとっては、かなり特別な位置づけの旅行会社であるようだ。

 成田からの帰阪の足を考え、東京出張への足は飛行機とした。  結果的にこの選択によって、10日間で9回飛行機に搭乗するという、お馬鹿な旅程になってしまうのだが・・・

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 東京国際フォーラムでの用件を16時で切り上げ、成田に辿り着いた時には、出発まで1時間半を切っていた。
 実はノースウェストに乗るのはこれが生まれて初めてである。  ノースウェストに一度も乗らずして、4万マイルものマイレージが貯まっているのだ。 マイレージとは 不思議な仕組みであると、つくづく思う。

ノースウェストA330  ノースワーストとも揶揄されるノースウェスト航空、いかなる話のネタが待ち構えているのだろう。 変な期待を感じつつ機内に乗り込んだ。
 しかしどういうことだろう、無愛想でデブであるはずの客室乗務員は、みんな愛想が良い、美人でスリムなアジア系女性だ。  機内(A330)も非常に綺麗でプライベート液晶モニターまで付いている。  これでは、タイ航空やシンガポール航空にも全く引けをとらないではないか・・・

ノースウェスト機内食  NW珍搭乗記を面白おかしく知人にしゃべりまくるつもりだったのだが、ネタが全くなくなってしまった。  もっとも、期待値が低かった分、NWへの好印象が増幅されるのであるが・・・

 

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 プライベートディスプレイでディズニーアニメ三昧だった私にとって、6時間強のフライトは、さほど退屈なものでは無かった。
 成田を30分遅発したにも関わらず、ドオンムアン空港には30分早着するらしい。 そもそも運行スケジュールに余裕を持たせてあるのか、 それとも、パイロットがつじつま合わせを行ったのだろうか・・・ おかげでこちらは空港での時間潰しが30分増えてしまった。

ドンムアン空港  イミグレーションを出たところの数軒の銀行には両替の長い列が。
しかし、タクシーカウンターより外側にも銀行があって、 こちらは穴場的に客がいない。(窓口の女性は居眠りしてるし・・・)
これもドンムアン3回目の学習効果と言えよう。

 ヴィエンチャンからルアンパバーンへのフライトは、本日の正午発である。 ラオス航空は運行スケジュールが 不安定であるため、2時間前の午前10時にはヴィエンチャンの空港について置くべきと、釘を刺されていた。
 ドンムアン空港からヴィエンチャンまで、色々なルートを検討してみた結果、

 @ドンムアン空港から、タイ北部の町ウドンタニまで国内線で空路移動
 Aウドンタニからヴィエンチャンまで陸路移動

というのが一番確実な移動方法であるようだ。

タイ汁そば 空港職員の女性(ピンボケ)  とりあえずタイに着いたたからには、まずはタイ料理をということで、空港駅の近くにある屋台に行ってみる。
 汁そば一杯で僅か25バーツ、ドンムアン空港内では同様のものが数倍するであろうが、僅か数十メートルでこの価格差だ。  向かえに座っていた空港職員の女性が調味料を勧めてくれる。 危うく砂糖を入れられそうになったが、 タイ人の味覚としてはスープに砂糖は普通らしい。 これも異文化コミュニケーションというやつですか。

食事が終わっても、まだ1時半、翌朝の6時のフライトまで、まだまだ時間がある。

国内線ターミナル 国内線への連絡通路  とりあえず、国内線ターミナルまで歩いてみる。 ドンムアン空港の国際線ターミナルと国内線ターミナルは、 1km近い連絡通路で結ばれている。  国内線には深夜便はないので、連絡通路はホラー映画のワンシーンのように静まり返っている。
 国内線ターミナルに到着すると、床の上には多数の西洋人、日本人が雑魚寝をしている。 私も雑魚寝の仲間入りをすることに・・・


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