クアンシーの滝

 コールドリバーゲストハウスは中年のご夫婦と娘さん、奥さんのお母さん、女性の従業員で切り盛りしており、みんなとてもフレンドリーだ。  客とスタッフの関係というよりも、大家族に加わったような感覚に近いだろうか・・・

フランスパンの卵サンド  一応レストランも併設しているが、大通りからからに奥に入っているので、実質的には、 このレストランは宿の客とスタッフの専用と言ってもよい。
 卵サンドイッチを頼んでみる。 ベトナムと同じく、ラオスでパンと言えばフランスパンである。  パンの表面を炭火で少し炙ってくれるので、焼きたてのようなパリパリ感を楽しめる。

「今日はどこかに行くの?」 おやじさんが尋ねてきた。
「いや、別に。」
「クアンシーの滝に行かないか?」

 他の客がトゥクトゥクをチャーターしてクアンシーの滝という名所に行くので、シェアしたらどうかと声を掛けてくれたのだ。  折角の申し出なので、午後1時に宿に戻ってくる約束をして、市内の散歩に出かけた。

シーサンウォン通り  シーサンウォン通りというのが、ルアンパバーンのメインストリートになるのだが、このメイン通りにすらビルと呼べる建物は全く存在しない。   高くても3階建ての民家のような建物が整然とならんでおり、京都の町屋のように景観が統一されている。

マンゴーシェイク  外見は伝統的な建物でも、内装はお洒落なカフェ風になっている。 インターネットカフェも多く、 250キップ/分(40分で1ドル)で統一されているようだ。

 一軒のインターネットカフェの店頭で、マンゴーシェイクを頼んでみた。 マンゴーの果肉、シロップ、氷をミキサーにかけるのだが、 これが・・・凄まじく旨い。何と旨いのだ。 しかも僅か3000キップ(30セント)である。  生まれてこの方、一番旨いと思ったジュースは、道頓堀の松竹座向かえにある、8(エイト)という店のメロンジュースなのだが、 この味は匹敵してしまったかも知れない。 コストパフォーマンスからいくと、このマンゴーシェイクこそ究極のジュースと言っても過言ではない。

王宮  シーサンウォン通り沿いで、プーシー山の参道を下ってきた所には、かつての王宮が博物館として残っている。(館内は撮影不可)
 王宮時代のインテリアや調度品がそのままの状態で保存されている。 王宮にしては比較的質素な感じであるが、落ち着いた色使いは、 現代のインテリアでも十分に通用すると思われる。

ヴィラサンティ サッカリン通り  東に進むと、王女の別荘を改装したホテルである、ヴィラサンティも見えてきた。
 この辺りからシーサンウォン通りはサッカリン通りと名前を変え、寺院が集中するエリアとなる。

ワットシェントーン 紙すき工房  数ある寺院の中でも、ワットシェントーンは世界文化遺産選定の中心となったものであるらしい。  他の寺院は基本的に入場無料だが、この寺院ではしっかり1ドルもの拝観料を取る。
 ワットシェントーン近辺には、まるで日本の和紙のような紙すきの工房が多く、和紙の工芸品の土産物が並んでいる。  この風景もまるで京都に来たような既視感を感じる。

 サッカリン通りの突き当たりを左に折れ、道なりに歩くと、メコン川に到達する。

メコン川 高速ボート  随分上流に来ているのであるが、川幅はとても広く雄大な流れだ。 このままカンボジアを通って、ベトナムに流れていくのだ。  「母なる川メコン」というを何となく実感できた気がする。
 メコン川の岸辺にはボート乗り場が多数あり、近郊の観光地であるパクウー洞窟や、タイとの国境の町ファーサイへの高速ボートが就航している。

メコン川沿いのホテル メコン川沿いの道路  メコン川沿いにはオープンカフェが並び、道を隔ててゲストハウスが軒を連ねている。 ホーチミンのデタムのように、 ここは西洋人が集結している街であった。

メコン川とビアラオ

まだ午前中なのだが、メコン川を見ながらラオスの国民的ビールである「ビアラオ」をやる。   このビアラオ、すっきりしていて大変飲みやすい。 キレがあるってやつだろうか・・・
 タイの濃厚なビールも悪くはないが、南国にはこのような味覚のビールの方が向いているだろうなと思われる。

屋台街  メコン川から王宮方面に抜ける道には沢山の屋台が並んでいる。 ルアンパバーンでは、地元の人が利用する食堂は比較的少ない。  彼らはこのような屋台でおかずをテイクアウトして、家で食事することが多いとのことだ。

*****************************

 約束の午後1時に宿に戻ると、トゥクトゥクシェアの人数は合計で4名に増えていた。 私とメグさんという日本人女性、 そしてイギリス人の老夫婦である。 この老夫婦は筋金入りのバックパッカーで、アフリカとアジアの二人で放浪しているようだ。
 日本から来たというと、「日本の物価はロンドンみたいに気違いじみたもんなんでしょう。 まぁ、一生行くことはないわね。」  なかなか直球勝負な人たちのようだ。

クアンシーの滝への道程 棚田  町を東の方向に30分も走ると道路舗装が無くなり、かなりの悪路となる。 凸凹の路面で体が跳ね上がってしまうような衝撃なのだが、 何故だか睡魔が襲ってくる。 「何故この状況で眠れるのだ?」イギリス人夫婦が不思議そうに尋ねるのだが、 電車の中で居眠りをする日本人の特性なのであろうか。
 辺りには棚田が広がっていて、テレビで見た山古志村の風景のようだ。 ここでも日本との類似点を感じる。

クアンシーの滝  トゥクトゥクを降りて10分ほど歩くと、クアンシーの滝に到達した。
 滝の流れは周りの木立の中を通り、何本もの白い水の糸が広がっている。 いやはやなかなかの絶景だ。  激しい流れによる霧があたりに漂い、マイナスイオンに満ち溢れているという感じだ。
クアンシーの滝を泳ぐ  滝壺から数十メートル下ると遊泳場があったので、早速泳いでみる。 水は結構冷たいが、気持ちが良い。

*****************************

 帰りの悪路も睡魔と闘いつつ、日没前には宿に帰着した。

 メグさんが中央市場であるタラート・プーシーに行こうと言うので、連れて行ってもらうことにする。  流しのトゥクトゥクと交渉。 まずは一人2ドルだったが、簡単に一人50セントに値下げされる。

タラート・プーシー タラート・プーシー  小さな町ルアンパバーンにしては、このタラート・プーシーはかなり大規模なものだ。  ただし、照明設備に乏しいので、日没が近づくにつれて店がどんどん閉まっていく。
 生鮮食料品、乾物、布地などの店が並んでいる。 特に気になったのは、ルアンパバーン名物の「カイペーン」という海苔である。  調理方法が分からないので買って帰るのは断念・・・

 宿に戻るとすっかり日が暮れていた。 赤十字サウナでラオス式マッサージを受けるというメグさんと別れ、 ルアンパバーン名物のナイトマーケットを見学に繰り出す。  メインストリートであるシーサンウォン通りは夜間には歩行者天国となり、多くの露店が出現するのである。

ぶっかけごはん ごはん屋台  まずは腹ごしらえということで、5000キップ(50セント)で、おかずとご飯取り放題の屋台を攻める。
 ラオス人はビニール袋に入れてもらってテイクアウトしているが、皿に盛って、その場で食べてもOKである。

ナイトマーケット  ここのナイトマーケットはなかなか幻想的である。 シーサンウォン通りにゴザを敷いただけの露天が無数に出店している。  伝統の巻きスカートからTシャツ、お土産物に並んで、小数民族のミャオ族の女性(日本髪のような髪型が特徴)が民族衣装を販売している。
 しかし、ラオス人はあまり押しが強くない。 声を掛けてきても、こちらが気の無い態度を取ると簡単に諦めてしまう。  そもそも客が声を掛けるのを待っているだけの店もある。
 でもこういう所が、ルアンパバーンの居心地の良さに繋がっているだろうな。

ココナツのたこ焼き?の屋台 ココナツのたこ焼き? 五平餅?  屋台には結構不思議な食べ物がある。 まるでたこ焼きのような物を買ってみると、ココナツミルクと米粉を混ぜて焼いたスイーツである。  五平餅のような食べ物は、味も五平餅そのものであった。

 宿に帰ると、入り口のテーブルに日本人男性が座っていた。 彼は雲南省から下ってきた、本格的バックパッカーらしい。  これからバンコクに移動して、西に旅を続けるとのこと。

「何故か、いつもルアンパバーンに来ちゃうんですよね。 しかもこの宿にね。」

これからヴィエンチャンとシェムリアップを回ることを彼に伝えると・・・

「ヴィエンチャンって何も無い所ですよ。 それよりも、シェムリアップには、きっと失望すると思うけどね。」

「どういう意味ですか?」

「日本人のガキどもにね・・・」

この時には彼の言うことは理解出来なかったが、後になって実感することになる。


Google
 
Web backpacking.nobody.jp