水上マーケット&ジムトンプソン

 早朝5時過ぎに目を覚ました。 長い一日の始まりである。

 タイは4度目、バンコクは3度目であるが、案外、有名な観光スポットは回れていない。
今日はひたすらミーハー観光客に徹するのだ。
事前の脳内シミュレーションの結果、 水上マーケットとワット・ポーのマッサージ、ジムトンプソンの家は、1日でも十分に回れるとの結論を得た。

 水上マーケット(Floating Market)のあるダムヌン・サドアック(Damnoen Saduak)へは、 南バスターミナル(サイタイ)からバスが出ている。
 所要時間は片道で2時間くらいかかるらしいから、  6時のバスに間に合えば、なんとかチェックアウト時間の正午までに宿に帰ってこれる計算だ。
 プラピンクラオ通りを渡ったところにあるバス停で、128番のバスに乗り込む。  車掌に「サイタイ?」と尋ねると、軽く頷いた。

ダムヌン・サドアック行きのバス  南バスターミナルに着くと、赤いスーツの女性が声を掛けてきた。「Water Market?」
 顔を見て行き先を判断できるなんて凄いな、と感心しつつ、彼女の指示通り、78番のバスに乗り込んだ。
彼女にダムヌン・サドアックまで60バーツ金額を払うと、彼女を乗せたままバスは発車した。
 彼女のことを、てっきりバスターミナルの場内係員だと思い込んでいたのだが、彼女の正体はこのバスの車掌であった。  私の顔で行き先を判断したのではなく、単にバス発車の最終アナウンスをしていただけだったのだ・・・

 爆睡していた私の肩を誰かが叩く。 終点のダムヌン・サドアックに到着したことを、他の乗客が教えてくれたようだ。  バスを降りようとする私を車掌が制する。 「水上マーケットの近くまで連れて行ってあげる。」とのことだ。  「ラッキー」と思いつつ、バス停から200メートルくらい遠方にある駐車場まで乗せてもらった。

 バスを降りると観光ボートの客引きが集まってきた。 値段を聞くと800バーツとのこと。  「金が無い」と突っぱねると、簡単に400バーツまで下がったが、それでもまだまだ高いことには変わりない。
水上マーケットへの看板  「水上マーケットまでは、観光ボートじゃないと行けないよ。」と、バスの車掌も客引きのサポートに回る。  やけに親切に連れてきてくれた理由は、観光ボートの客引きからバックマージンをもらっているのかも知れない。

 いずれにしろ、「観光ボートでしか水上マーケットに行けない」という見え透いた嘘は、そう簡単には通用しないだろう。  何故なら、すぐ横の道には水上マーケットへの道順を書いた看板が立っているのだから・・・

ダムヌン・サドアック水上マーケット ダムヌン・サドアック水上マーケット  客引きと車掌を振り切り、15分も歩くと、水上マーケットに到達した。
 水上マーケットの周りは桟橋が取り囲んでおり、観光ボートに乗らずとも、桟橋の上からの見学で十分堪能できると思われる。

フルーツ屋台 汁そば屋台  観光ボートや桟橋の客が、水上に浮かぶ屋台から買い物をする。
 かつては水上生活者の生活を支えるマーケットだっただろうが、 ここダムヌン・サドアック水上マーケットは、観光客向けに新たに整備されたものらしい。

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 サワディ・クルンテープ・インに戻ったのは11時45分。 慌ててシャワーを浴び、無事に正午までにチェックアウトできた。
 この宿では1つ10バーツで荷物を預かってくれるので、バックパックを夜の11時まで預けることにする。 (ちなみに、ドンムアン空港とファランポーン駅での荷物預かりサービスは、各々、70バーツ、20バーツが必要である。)

屋台のグリーンカレー  朝食は水上マーケットで食べた汁そばと焼きバナナだけだったので、お腹が空いてきた。
 ランブトリ通り(Rambuttri Rd.)の屋台でグリーンカレーとタイ風おでんを頼む。  カレーがぬるいのは玉に傷だが、ジャスミンライスとココナツミルクの香りがたまらない。
 ご飯10バーツに、おかず、カレー類が20バーツずつ。 しめて50バーツなり。

チャオプラヤ・エクスプレスの路線図  プラアティット通りの裏手には、チャオプラヤ・エクスプレスのバンランプー桟橋がある。  チャオプラヤ・エクスプレスは、その名のとおりチャオプラヤ川を運行する高速水上バスである。
 渋滞だらけのバンコクの陸上交通に比べて、目的地への移動時間が読める。  また、観光客にとっての最大のメリットは、チャオプラヤ川の上り下り方面だけのシンプルな経路なので、 バスのように複雑な経路で悩む必要がない。

チャオプラヤ・エクスプレス  チャオプラヤ・エクスプレスにも急行の類があって、黄色い旗が急行、赤い旗が準急、旗無しが各駅停車のような感じだ。
 アクアライナー等の日本の水上バスは、料金が高くて観光船の色合いが濃いが、ここバンコクでは日常的な交通手段として、 水上交通が安価で提供されているのは、少し羨ましい。

ワット・ポー ワット・ポー  チャオプラヤ・エクスプレスのタチャン(Tha Chang)桟橋にて降船し、土産物屋街を抜けると、ワット・ポー寺院の巨大な大仏殿が現れる。

ワット・ポーの涅槃仏  ワット・ポーと言えば、黄金に輝く巨大な涅槃仏が有名である。 しかし、今回訪問した主目的はこの大仏観光ではない。
ワット・ポーのマッサージ院  本堂を抜けて、寺の裏手に回るとそれはあった。 ワット・ポーのマッサージ院である。
 いわゆる「タイ古式マッサージ」は、ワット・ポー・スタイルとも呼ばれていて、ここワット・ポーのマッサージ院が総本山である。  昔の国王の命により設置された、由緒正しいマッサージ院ということである。
 詳しい経緯はともかく、マッサージ好きにとっては、必ず押さえておくべき施設であることは言うまでも無い。

ワット・ポーのマッサージ院 ワット・ポーのマッサージ院  マッサージは30分180バーツ、1時間で300バーツである。
 カオサンの相場からすると2倍近い金額だが、 こういう所では金を惜しむべきではないだろう。 迷わず1時間を選択する。

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チャオプラヤ川から見たワット・アルン ワット・アルンを見上げる  タチャン桟橋からはワット・アルンへの渡し舟(2バーツ)が出ている。
 ワット・アルンは10バーツ硬貨の裏側にも刻印されている、 タイを代表する建築物であり、三島由紀夫の小説「暁の寺」のモデルとしても日本人には馴染みがある。 (もっとも、読んだ事は無いのだが・・・)

 高くそびえ立つワット・アルンを間近で見上げると、さすがに迫力がある。 現代の技術をもってすれば、さほど驚くべき建築物ではないが、 150〜200年前に建立された当時では、民衆の度肝を抜いたことだろう。
塔の上の方には登れないのは少し残念だが・・・

チャオプラヤ・エクスプレス チャオプラヤ・エクスプレス  再びチャオプラヤ・エクスプレスに乗り込み、さらに南下を続ける。
 サートン桟橋(Sathon)は、BTSのサパーンタクシン駅(Saphan Taksin)と直結している。 ここでBTSシーロム線に乗り、 終点のナショナルスタジアム駅まで行く。 ホームからは、かの日本 VS 北朝鮮の無観客試合が行われた、国立競技場のグランドが見える。

ジムトンプソンの家  駅の北西側出口を出て、北向きに歩くこと約100メートル、ジムトンプソン(Jim Thompson)の家に到着した。
 3年前は入り口まで辿りついたものの、閉館後で断念を余儀なくされたが、今日はかろうじて間に合ったようだ。

受付嬢  100バーツの入場料を払うと、品の良い衣装を身に着けた受付嬢に、日本人である旨を確認された。  館内は自由に見て回ることはできず、案内ツアーになっているらしい。
 案内ツアーには英語、タイ語、日本語のものがあるため、日本人の振り分けが必要なのだった。

美人ガイドと  ツアーの集合時間になると、思いっきり美人の日本語ガイドが登場した。  いやいや、がんばってここまで来た甲斐があったというものだ。

ジムトンプソンの家  館内は全体的に落ち着いた色調で、いかにもリラックスできそうな感じだ。
 何故、彼の家がここにあるのかと言うと、昔は北側の運河の向こう岸に製品の工場があって、運河の水で絹染物を洗っていたとのこと。
 美人ガイドは館内の展示物に関して、我々にクイズを出していく。 その時の悪戯っぽい表情がたまらなく魅力的だ。

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派手なラッピングのBTS  ジムトンプソンの家にも大きなショップが併設されているので、ここでお土産を買うという手もあるのだが、 事前の情報収集により、ジムトンプソンにはアウトレットショップがあるということを突き止めていた。
 どうせ買うならお買い得品を、ということで、BTSスクンビット線の終点、オンヌット駅(On Nut)まで急ぐ。

ジムトンプソンのアウトレット店 Soi93  駅を出て、スクンビット通りの左側を進行方向にしばらく歩き、Soi93という青い看板の交差点で左に折れ、数十メートル進む。
 ジムトンプソンのアウトレット店(Jim Thompson Factory Sales) の看板が登場する。

 品揃えは限定されているものの、安いものでは6割〜7割引の商品が並んでいる。
定番のシルクの化粧ポーチなどを、会社の同僚女性向けに大量に買い込むには最適な場所である。
 クレジットカード払いで、調子に乗って買い込んだ結果、代金は4千バーツを超えた。  すると店員が耳打ちをしてくる。 「5千バーツ以上をお買い上げされると、消費税7%が還付されますよ。」と。  つまり、あと千バーツ買うと、350バーツ帰ってくるのだ。

こういう場合、結局は無駄なものまで買ってしまう始末となるのだが・・・

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 オンヌット界隈を探索していると、激しいスコールが襲ってきた。  急いでタクシーに乗り込んだものの、時すでに遅しで服はびしょ濡れである。
 BTSに乗り替えると、強烈な冷房地獄が待っていた。  冷房を思いっきり効かせつつ、厚着するのがタイ人の流儀らしいが、クールビスな日本人には過酷な試練だ。

 凍死寸前?のところで、ようやくサパーンタクシン駅まで辿りつき、サートン桟橋に向かうが、 チャオプラヤ・エクスプレスの最終便はもう終わったらしい。  仕方なく、カオサンまでの代替の交通機関を駅員に尋ねると、15番のバスに乗れば良いとのことだ。
 15番のバスはサイアムスクエアを通り、カオサンの南側のラチャダムヌン・クラン通りのバス停を経由する。  カオサン住民にとっては、かなり便利なバス路線と思われる。

 サワディー・クルンテープ・インにて荷物を受け取り、残り少ないカオサンでの時間をインターネットカフェで過ごす。  0.5バーツ/分という低価格にも関わらず非常に高速である。 さすがはインドシナ半島随一の経済大国、 ラオスやカンボジアとはレベルが違う。

デザート屋台 かぼちゃプリン  最後の晩餐はデザート屋台にて、かぼちゃプリンを食す。
 タイのスイーツは強烈な甘さを持つものが多いが、このプリンに関しては日本人好みの甘さ控えめだ。

 時刻は既に深夜0時を回っている。
 明朝6時発のNW便で帰国するためには、そろそろドンムアン空港に向かわねばならない。  ラチャダムヌン・クラン通りのバス停から、ドンムアン空港方面行きの59番のバスに乗り込む。

 旅前半のラオスでのまったりモードとは正反対の、長くて慌しい一日だった。  でも、こういう旅のスタイルもまた、楽しいものだ。

 多様な価値観、多様なスタイルの旅人を受け入れる懐の深さ、これこそインドシナ半島の最大の魅力かも知れない。


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