裏目裏目に出る日

 ドミトリーの隣人は予想外にマナーが良く、昨晩はぐっすりと睡眠できた。
 Happyの空調は夜間のみで、朝9時には切れてしまう。 とっとと活動を開始した方が良さそうだ。  今日はあえて一般的なガイドブックに載っている、ありきたりな台北近郊旅行をしてみることにする。

 ガイドブックには、九イ分という町が大きく掲載されている。  「非情城市」という映画の舞台となった地であるらしいのであるが、残念ながらその映画を見たことは無い。  九イ分の近くには金爪石という町があり、かつては日本人町として栄えたとのことだ。
 いずれにしても、お手軽に2つの話題スポットを制覇できるならば、話のネタとしても押さえておいてもよろしいかと・・・

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台北駅の鉄道グッズ店  台北駅から九イ分、金爪石の最寄である瑞芳駅までは自強号で40分程度である。 瑞芳駅前には基隆客運のバスが発着している。  このバスは九イ分を経由し、終点の金爪石に至る。
 ガイドブックによると、観光客でごった返す九イ分に比べて、金爪石の寂れた雰囲気は風情があるらしい。

金爪石のバスターミナル  金爪石のバスターミナルは綺麗に整備されていて、金鉱をテーマにした大規模なテーマパークの入り口が見える。  「どこが寂れた雰囲気やねん!」と思わず突っ込んでしまう。
日本家屋  このテーマパークは金鉱だけではなく、日本時代の風情も売りであるようで、日本家屋も手入れ良く保存されている。  このあたりが、「台湾人は親日的」と思われている所以であろうが、実際のところはどうなんだろう。  幸いにして、今までいった国は全て日本人に対して親切な気がしたため、台湾も普通に親日的であるというのが、正直な印象だ。

黄金神社の名残  テーマパークの展示館を抜けて高台に上ると、さすがに観光客も少なくなる。 ここには日本時代に「黄金神社」という 神社が建っていたということで、鳥居や灯篭の名残が残されている。

黄金神社から望む海  神社の本殿跡から見る海の風景は、非常に綺麗だ。  かつて100名以上居住していたという日本人も、遥か海の向こうの故郷を懐かしんだことだろう。

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 復路のバスに乗ること5分くらいで、九イ分に到着した。

九イ分のアーケード  ガイドブックの記述とおり、凄まじい人の数だ。 ほとんどラッシュアワーの地下鉄並みの混雑だ。
九イ分の坂道  九イ分にはメインのアーケードと、階段が連なる坂道の2つがあり、後者はガイドブックの表紙を飾る風景である。  土産物店が立ち並ぶ坂道という様からは、清水寺の産寧坂が連想されるのだが・・・
 大きな違いは、産寧坂は清水寺というオチがあってこそ存在する、いわばツカミなのであるが、九イ分はそれ自体がオチである。

芋入り白玉カキ氷  芋入り白玉とタピオカが乗ったカキ氷の店が目立つ。 どうやらこれが九イ分の名物デザートであるらしい。
味は想像どおりの素朴なものであった。

 しばらく九イ分を散策してみたが、私とはあまり相性が良く無さそうだ。 とっとと台北に引き返す事にした。
 満員のバスで帰った瑞芳駅で、台北行きの復興号のチケットを購入するも、残念ながら座席にはありつくことができなかった。  台北駅までの約1時間を満員の立席で過ごす羽目になった。

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 台北駅でMRT(地下鉄)の一日乗車券(150元)を購入した。 数年前に台北に来た時に比べてMRTの路線が大幅に拡充されている。  気のせいか、道路の混雑状況もかなり改善されている感じだ。

鼎泰豊の美人案内係  朝からカキ氷しか食べていないので、少し遅い目のランチを取ることにする。 MRT淡水線の古亭駅を降りて北東に向うと、 グルメの町「永康街」に辿り着く。 ここでのお目当ては、言わずと知れた鼎泰豐(鼎泰豊)本店の小籠包である。 (ディンタイファンと発音する)
 日本でも島屋のほとんどの店舗で食すことができるのだが、やはり本場の味を味わってみたい。  信義路に面した店の前には多くの客が入店を待っていた。 予約帳を持った綺麗な女性に名前を告げる。 長い待ち時間を覚悟していたが、 空き席が出次第、一人客は優先的に案内してもらえるようだ。 ほとんど待ち時間無しで入店できた。

鼎泰豊の小籠包  念願の小籠包が目の前に運ばれてきた。 確かに美味しいのであるが、日本で食べるものと大幅に違う訳でもない。(当たり前の話なのだが・・・)
 贅沢な事をしているはずなのだが、全然感動が沸いて来ない。 残念ながら私の貧乏舌には、高級小籠包よりも屋台の安飯の方が美味しく感じられるようだ。

 本日は自分でも珍しく計画性を発揮して、食後のデザートもリサーチはバッチリだ。

氷館のマンゴーカキ氷 氷館本店  永康街を南に下ると、氷館(Ice Monster)の本店があり、こちらにも数十人の行列が出来ている。
 マンゴーカキ氷で有名なこの店は、既に大阪(あべのHOOPやなんばウォーク等)に進出しており、日本国内では大阪名物扱いされているらしい。
 迷うことなく、マンゴーカキ氷(150元)を選択する。 こいつは間違いなく絶品だ!! 激ウマだ!!

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台北101係  MRT板南線の市政府駅を南に下ると、世界一の高さを誇る「台北101」がそびえたっている。  低層部分は三越やショッピングモールになっており、世界最速のエレベータを使って上層部の展望台に行くことができる。

 この展望台への待ち行列がハンパな人数ではない。 また入場料も350元(一番上の展望台までなら、さらに100元)と高飛車な値段である。  台北101も私とは相性が良くないようだ。 展望台を上らずにこの場を去ることにする。

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 MRT淡水線の北の終点には、夕日の名所である淡水の街がある。 かつては港町として栄えた所であるが、今は気軽な観光地として台北市民から人気がある。

淡水の夕日  MRTを乗り継いで淡水に着いた時には既に陽は沈んでいたが、辛うじて夕日を見ることは出来た。
 日曜日ということもあってか、淡水の町はまるで祭りのような賑わいである。
淡水の町並み  台北市内に比べると何かレトロな感じが漂っているのが人気の秘密かも知れない。
 幼少の頃に 近所の寺のお祭りに連れて行ってもらった時を思い出した。

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 MRT淡水線で北投駅まで戻り、支線に乗り換えて終点の新北投駅に戻る。

北投温泉の温泉宿街  ここには戦前に日本人が開発したという、北投温泉がある。  駅前には大きな温泉宿が建ち並んでおり、さながら有馬や熱海のような感じだ。
北投温泉の公衆露天風呂  温泉宿街の真ん中には、公園と安価に利用できる公衆の露天風呂がある。 露天風呂の入り口は正に和風そのものだ。  ただしここでは、水着着用である点と、大きな荷物の扱いに困るのが難点である。

温泉宿の内湯  一軒の温泉宿に立ち寄り、ビジター利用が可能であるか訊ねてみた。 250元で内湯が利用可能とのことだ。
 大きな檜風呂の壁面には浮世絵が描かれている。 台湾ではやはり、温泉=日本文化であるらしい。 近くには日本の加賀屋旅館が進出するらしいから、 ますます日本の温泉文化が浸透して行くのだろう。

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士林駅前の旧屋台街  温泉の後は遅い夕食ということで、士林夜市に繰り出す。 数年前に来た時には、MRT士林駅近くにあった狭くて小汚い屋台街に全ての店が集中していたが、 現在は買い物系の屋台のみが元の場所に残り、食べ物系の屋台は隣のMRT剣潭駅前にできた、巨大なフードコートに移転している。
 比較的清潔感があり、女性などには好評なのだろうけど、個人的には夜市の持つ、ある種の「いかがわしさ」が無くなって、面白みが減った感じがする。

士林夜市の食品街 士林夜市の食品街  大根餅と台湾ビールという王道メニューで、一日の疲れを癒す。 やはり台湾は安飯が最高だ。
 入り口の屋台では客がテーブルの上に頭を横たえている。 客の耳に円錐状の紙を差し込まれ、もう一方の先端に火を着けている。  恐らくは炎による上昇気流で、耳垢を取るということなんだろう。

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 まだお腹には余力を残しているので、台湾最後の晩餐はお粥で締めることにする。

復興南路沿いの「お粥横丁」  ニュートラムのような新交通システムである、MRT木柵線に乗り換え、科技大楼で下車し、復興南路沿いを北上すると、通称「お粥横丁」が出現する。  何軒か並んでいる粥店のうち、「永和清粥大王」という店に入ってみる。
 店の雰囲気はファミレスのようで、少し拍子抜けした。 入り口に並んだトッピングを選んで席に着くと、お釜に入ったお粥を持ってきてくれる。

永和清粥大王のお粥  麻婆豆腐と高菜を選んで待っていた所に運ばれた来たのは、日本の粥と同じような清粥であった。(サツマ芋入り)
 本当はダシの効いた中華粥を食べたかったのだが、この店は清粥専門店らしい。 そもそも店名からして 推して知るべしということか・・・
 壁には、渡辺満里奈とホンジャマカ・石塚のサインが飾ってある。 「まいう〜」と言っている取材風景が頭に浮かぶ。

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中華航空のラウンジ  最終日の朝は始発のバスで、中正国際空港へ向う。 もちろん、ビジネスクラスの特権をしゃぶり尽くすため、ラウンジ利用は外せない。  ノースウェストはラウンジを持っていないので、中華航空のラウンジ券が渡される。
 点心と汁そばが供されているので、関空の飛鳥ラウンジよりは多少サービスが上かも知れないが、所詮は五十歩百歩というところ。

ノースウェストの機内食  搭乗口の前では、3日前のロンドンでのテロ未遂の影響により、液体系の物は全て没収されるとのことだ。
 唯一の土産品として、ラウンジからかっぱらってきた台湾ビールはあえなく没収された。
無料だからと言って、あまりにセコい事をすると、バチが当たるものである。


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