ベトナム貧乏旅行出発前後

 時計を見上げると既に22時を回っている。資料作成を切り上げ上司にメールを送るや否や、私はエレベータへと駆け出した。  関西空港行き最終急行・難波発22時36分、こいつを逃すと、ちょいと高くなるというか、タクシー以外に方法がないわけで・・・ 貧乏旅行を前にして早くも貧乏性に蝕まれている私にとっては、大阪市内から関西空港までのタクシー代はとてつもない法外なものに感じられる。
 わずか8連休とはいえ、なんちゃってバックパッカーのサラリーマンに取っての長期休暇は時に多くの代償を伴うものである。  前日も終電帰りの私はフラフラになりながら関西空港へと向かった。

 思い立ったのはわずか3週間前。何気なく立ち寄った旅行代理店で見た格安航空券のパンフレットの1ページが目に留まった。 「タイ航空深夜便利用・ホーチミン」。 我ながら計画性がないと苦笑しつつも、こうでもしなければサラリーマンの バックパッキングってのは成立しないんだと、妙に納得してしまうところが反省がない。
空港利用税の航空券転嫁と出国カードの廃止によって妙に簡素化された手続きで、離陸まではあっけなく過ぎた。  8日間の不在を埋めるべく馬車馬のように?働いて、昼食もろくに食べていない私にとって、 今日ほど「機内食」という響きが魅力的に感じられたことはない。 しかしミールサービスは・・・コンビニおにぎりが1つ。  呆然とする私に気が付いたかどうだか、スチュワードのおっちゃんはそっと私に余りおにぎりを渡してくれた。

 早朝5時過ぎのバンコク国際空港は、上空から見るよりはるかに宵闇に包まれていた。  ホーチミン(Ho Chi Minh)行きの便は11時発。 つまり6時間近くもここで時間潰しをしなければならない。  手持ちのクレジットカード(ゴールド)のラウンジはここでは利用できない。  かといって入国して観光するのも時間もないし、500バーツ(約1,500円)もする空港利用税がもったいない。
 祠のような免税店の一角にある板の間を発見すると、人目もはばからず爆睡モードに突入した。

タイ航空ホーチミン行き  ホーチミン便は「Delayed」。 待ち時間6時間が6時間半になっただけであったので私には屁でもなかったが、 うんざりしている人々を見ると、ざまあ見ろという感じでむしろ楽しかった。  いずれにせよ、これでとにもかくにも目的地に向かうと実感が沸いてきた。
 ようやく我らが737が到着し、バスにて搭乗する。  機内で隣り合わせたフィリピン人女性はコニカの営業マネージャということで、優雅なバカンスをホーチミンで過ごすとの事。  オムニサイゴンに宿泊するという彼女に「私と同じホテルに泊まりなさいよ」と言われたものの、 私の所持金では2日と持たないという事実を前に、甘い期待は放棄せざるを得なかった。
 しかしホーチミン国際空港(タンソンニャット空港)はしょぼい。  国内で見た空港の規模で例えるなら花巻空港以上、熊本空港未満といったところか。 (両空港関係者のみなさま、すみません)

 空港前には想像通り、タクシーやバイタクのあんちゃんがたむろしており、旅行者と見るや、一斉にたかってきた。  彼らから逃れるように大通りに出ると、路線バスの停留所を探した。
私の場合、所詮は「なんちゃってバックパッカー」であるが故、必ずしも「お金を掛けない」ことは重要ではない。  貧乏旅行風であっても本当に貧乏な訳ではない。早い話が「貧乏旅行ゴッコ」を楽しんでいるというのが根底にある。  しかし唯一こだわっているのは「公共交通機関の積極的利用」なのだ。
 最初は見知らぬ土地でタクシーに一人で乗るのが怖いという臆病な理由であったが、 いつしか公共交通機関利用自体が目的化しててきた。(言うなれば、公共交通機関オタクって感じだろうか。)

謎の少女  売店のおばちゃんの指差す方向に進み、公園を抜けると、ようやくバス停を発見できた。  バス停はネイルケアの屋台として活用されており、可愛らしい少女がケア中であった。  ベトナム女性とのファーストコンタンクトと少し興奮しながら、写真を1枚。  恥らう感じを見ていると「やまとなでしこ」てな陳腐な表現が頭をかすめる。
 しかし、ベトナム人女性の微笑みは素敵だ。男心をくすぐる何かがある。  微笑みの国と言われるタイの女性は実はとっても無愛想であることを実感済みの私にとっては、 これぞ本当の微笑みの国ベトナムだ!と密かな期待?に胸を躍らせるのであった・・・

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