メコンクルーズツアー(9月21日)

フランスパン屋台  今朝はいつに無く早起きだ。お気に入りのフランスパン屋台で、フランスパンにオムレツをはさんでもらった。  チリソースが効いていて激ウマだ。うーん日本にも欲しい!
 昨日の夜にシンカフェで今日のツアーを予約しておいたのだった。目的地はメコンデルタ。メコン川をクルーズして、 沿岸の町を周遊するというものであるが、2つのコースがあるようだった。両者の違いが分からないので、 受付の女性にお薦めを聞いたら、「ミトーという町にいくツアーが人気があります。」とのこと。
 しかしまあ、相変わらずの激安ぶりで、バスの送迎、ほぼ1日中のボートのチャーター、昼食までついてわずか 7US$である。

 ごった返すシンカフェの前に大型バス2台が到着した。日本人客用のバスと日本人以外の客用に分かれて乗車し、バスは出発した。  今回も韓国・ヒュンダイ製のバスである。 日本人向けのバスには田中さんという日本女性のガイドが付いたのだが、この人がまた超毒舌!

「日本人は観光スポットや買い物ばかり考えて、その国の歴史に目を向けようとしない!
「馬鹿な日本人はボッタくられて、金づるになるのがオチよ。」
てな話を田中真紀子のような声と口調でまくしたてる。
 最初はニヤニヤしながら聴いていたのだが、このような語り尽くされたステレオタイプ的日本人論を聴いているうちに、 なんとなく腹立たしくなってきた。 日本人自ら同じ日本人の誹謗中傷をするなんて、この人には家族や同郷の人たちを 愛する気持ちの片鱗もないのかな〜なんて。

 第一、買い物ツアーを非難している割には、連れて行くお土産屋さんの宣伝をしてしまうあたり、この人の頭の中では、 このパラドックスをいかに解決しているのであろうか・・・。 田中さんには不釣合いの可愛らしい手帳には、スケジュールが びっしりと書き込まれているようである。 手帳の中身には、きっとXファイル並みのすごい内容が書かれているのだろう。

メコン川の地図  てなことを考えているうちに、バスは停車した。ミトーという町に到着したらしい。バスを降りるや否や土産物売りの子供たちが 群がってきた。ホーチミンで売っているものと何ら代わりが無く、絵葉書なんて汚れまくっているし・・・ まぁ有名な観光地ゆえの洗礼とでも言おうか。
 路地を抜けると、メコン川に到着。遊覧船が発着する波止場がある。

メコン川 メコン川  ここから大型のモーターボートに乗り換えて、いよいよメコン川のクルーズの出発である。
 いつの間にか他のバスの乗客も一緒になって、小型の遊覧船に乗り込むと、えらくあっさりと出航した。
 隣になった女性は横浜のOLの一人旅ということだった。ドンコイ通りの最高級ホテルである、カラベルホテル(CARAVELLE HOTEL)に一人優雅に宿泊してるという、 40歳前くらいの、おねえさんとおばさんの微妙なラインの人であった。  幸が薄そうな風貌が気にはなったが、立ち入った質問は自粛した。

メコン川 メコン川  メコン川は幅が非常に広く、水の色は土色に濁っている。 この土色は土砂が川に流出したものではなくて、水に含まれる石英成分 によるものらしい。 ベトナム戦争ものの映画では見慣れた風景ではあるのだが、歴史的な大河と生のご対面に、大きく深呼吸した。
 田中真紀子似のガイド、田中さんは船上でも絶好調(舌好調?)だった。まぁガイドとしては良い人ではあるが、 説教モードは相変わらずであるが、バスの中では彼女の話にいささか食傷気味であった客は、船上ではみんなは周りの景色 に見入っているのか、ようやく楽しげな雰囲気になってきた。

メコン川  前方には漁船の一群が停泊している。水上マーケットとしても利用されているとのことである。かなり立派な漁船を見て、 改めて、ベトナムの農業・漁業の豊かさを実感できる。
 日本のように島国かつ物流が発達した国では、魚といえば海の魚を連想するが、特に東南アジアでは川魚の方が鮮度が高く、 珍重されるようである。
 数字上の貧富で評価するとベトナムは極めて貧乏な国ではあるのだが、数字に表れない豊かさというものも、あるものだなと 感じる。やはり南国は南国であるというだけで、ある種の豊かさが存在するのであろう。

 メコン川には大小さまざまな中州が存在する。無人島に近いものもあれば、一つの町が含まれるような大きなものも存在する。  まるで遊園地のような島に差し掛かった、ガイドの田中さんの言うことには、かつて新興宗教の総本山であったが、 教祖死去の後に無人島と化してしまったらしい。

 昼食のためにある島に上陸した。上陸後、しばらく歩くと椰子の木製品が中心の土産物店が待ち構えていた。
 説教モードであったガイドの田中さんは、手のひらを返したように熱心にセールストークを始め、「ホーチミンの街中では数倍するよ!」などと言って、 購買意欲を掻き立てまくる。(後で値段を比較したのだが、確かにドンコイ通りよりは安いが、ブイビエンやベンタン市場 とは同程度、チョロンと比較したらむしろ高いくらいであった。)
 そんな中で私もついつい箸とスプーンのセットを買ってしまった。ぶつぶつ言いながらもガイドに乗せられるあたり、 我ながら日本人っていいカモであるなと反省した。

メコンの昼食  嵐のような買い物タイムが終わり、レストランに連れて行かれた。基本料金に含まれている昼食は、ご飯とおかずの一皿 のみであり、希望者はオプションとして「エレファント・フィッシュ」というメコン川名物の魚料理を追加注文しろとのことだった。
 折角なので、同じテーブルになった愛媛から来たOL三人組と一緒に、一皿追加注文した。
 料理以外にさらにビールを注文して、お勘定をテーブルごとに集める段になって、かのOL三人組の一人が悲鳴を上げた。
なんと、彼女の財布が無くなっているとのこと。

エレファンと・フィッシュ エレファンと・フィッシュ  一瞬張り詰めた空気が流れたが、後から送れてきた客が、ボートの中で財布を拾ったと申し出て、一件落着となった。
 う〜む。無防備すぎると言おうか何と言うか・・・ ガイドの田中さんがあれほど説教モードであった理由が、今になって分かった気がした。

 エレファント・フィッシュは、から揚げにしたものの身をほぐして、生春巻きに包んで食べる。形が象に似ているらしいのだが、 残念ながら、私にはどこが似ているのか理解できなかった。 まぁまぁ美味いが、形を見て楽しむと考えるべきであろうか・・・

ジャングルクルーズ ジャングルクルーズ  昼食休憩後は同じ観光船に乗り込み、他の島へと移動する。 これから行く島では養蜂の村とココナツキャンディの工場を見学するとのことである。
 島に上陸すると今度は小さなモーターボートに乗り換えて、島の中の水路をさらに進む。

ジャングル ジャングルクルーズ

 モーターボートではこれ以上進めない限界に来ると、今度は手漕ぎボートに乗り換える。
 ベトナムの三角ワラ帽子(なんと呼ぶのか失念)をかぶった、おばさんが手で漕いでいく。
 陸地に上陸したら、ジャングルの中の小道を抜けていく。
まさに「プラトーン」の世界みたい・・・

ジャングルの少女  しかし、こんなジャングルの中にもしっかりと生活している人はいるようで、泊まっているボートの中から可愛らしい少女が顔を出した。
 ガイドの田中さん曰く、ここらの人々は大変な低所得であり、子供たちが作る「草でできたバッタ」を受け取っても現金をあげないように、 ということであったが・・・
 会う人たちは質素な生活ながらも、一様に笑顔で屈託がなく、決して悲壮感は漂っていない。

 たとえ現金収入は無くとも、メコン川とジャングルの恩恵に預かり飢えの無い生活は、見ようによっては豊かな気がするのだ。
 どこぞの将軍様が治める共和国を地上の楽園と呼ぶ連中が見たら、ここは紛れも無く楽園と言わざる得ないだろう。

蜂蜜おじさん 民族楽団 民族楽団  養蜂の村に到着した。おじさんが蜂蜜の巣を持って見せてくれたり、大きなニシキヘビを首にかけての記念撮影となる。
 一通りの撮影会が終わると、民族音楽?を聴きながら、蜂蜜入りの紅茶を飲む時間である。
 ボーカルの少女は可愛かったが、音楽的にはド素人という感じで、残念ながら鑑賞に堪えるものでは無かった。

 ティータイムが終わると、お決まりの買い物タイムである。ここでの目玉商品は「ここでしか買えない」お宝の蜂蜜である。  悲しいかな、私もガイドの田中さんの売り口上に煽られて一本買ってしまった。

ココナツキャンディー工場 ココナツキャンディー工場  ツアーの締めくくりは、やはりお土産?ということで、ココナツキャンディ工場見学&即売会が最後に待っていた。
 薄暗い工場の中で、女性たちがココナツキャンディの小片を一つづつ蝋紙で包んでいる。  一箱わずか数十円、キャンディ1個はたったの1円程度であるココナツキャンディにも関わらず、仕事は丁寧だ。 ベトナム人は日本人同様勤勉という話をよく聞くのだが、確かにうなずけるものがある。
 壁には妙に色っぽいポスターとともに「Welcome」の文字が・・・ 工場というより完全に観光スポットだ。

 追い討ちをかけるようにガイドの田中さんが、「他のココナツキャンディー工場はボッタクリよ! ここのキャンディはどこよりも安いから、 絶対ここで買うべき!」てな具合に煽りまくる。 私も含めて催眠商法状態に陥っているツアー客は買いまくる。
 みんなが素直にお土産を買ったからか、帰りの船やバスの中でのガイドの田中さんは、急に優しくなった気がした。

 バスがシンカフェに到着した時には、既にどっぷりと日が暮れていた。
屋台の兄ちゃん  この安宿街(ファングラーオ通り、ブイビエン通り、デタム通り一帯)で食事をするのも飽きてきたので、デタム通りを南に下ってみた。 通りを一本渡っただけで、町工場が点在する庶民的な街に変わった。
2ブロックほど下っただろうか、急に大きな屋台街が出現した。 安宿街にも屋台はあったが、こちらはまるで神社の縁日のような賑わいだ。  入り口では愛想のいい兄ちゃんが手際よく中華鍋を振るっている。なんとなく吉本新喜劇で「口笛吹いてるやろ」と突っ込まれる芸人に似ている気がする。

焼きそばとサイゴンビール  何といっても日本人を含めた外国人らしき人が居なさそうなのが気に入ったので、ふらっと入ってみる。  身振り手振りで注文した平打ち米麺の焼きそばと、お気に入りのサイゴンビール。 想像とおり美味い。
 周りを見回していると本当に庶民の町という感じで、ワイワイガヤガヤ実にみんな楽しそうだ。 入り口の兄ちゃんに促されるように、若い女性2名が私の横に座った。  一方の女性は英語が堪能らしく、はにかみつつも頑張って私に話しかけてきた。 高校生くらいに見えたが、彼女らは21歳で話をしてくれた女性はサンダル工場の 工員であり、もう一方は主婦だという。
 それを見ていた付近の客も、急に私の周りに集まり始めて、彼女を通訳にした質問タイムとなってしまった。  本当に彼らは日本に対して好奇心が旺盛であり、日本という国に対しての熱い思いを感じるのであった・・・

屋台でおごってくれた少女  一人旅で多少なりとも感じていた孤独感が吹っ飛んでしまう、楽しいひと時であった。
 お腹も心も満たされて、ボチボチ店を出ようと、お兄ちゃんにお勘定を聞くと、「お金は要らないよ!」
 何?何?どういうこと? 唖然とする私に、彼は続けて、「お代は彼女らが払ってくれたんだ。」
 どこまで私を感激させたら気が済むのだ、ベトナムって国は! 少しでもお金を払わせて欲しいと彼女に言ったが、 はにかみつつも「大した金額じゃないし、あなたと話せた記念だから・・・」と。


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