チョロン&戦争博物館&マンダリン(9月22日)

フランスパン屋台 TAN MAIPHAI  今朝も性懲りもなくにフランスパン屋台のお世話になる。 今日の屋台はフランスパンにオムレツのシンプルなものだが、 飽きのこない美味しさだ・・・
 できるだけ多くの宿を経験しようと、今日も宿を変えてみる。 今晩の宿は昨夜のThanhの隣にある、Tan Maiphai という宿で値段を聞いてみた。 昨夜の宿よりも若干部屋は狭いが、ツインルームのシングル仕様で一泊6US$とのこと。
悪くない宿で、4US$も安くなるの即決することにした。

 Tan Maiphai 住所:40/14A Bui Vien St. 電話:(84-8)8367439
    E-mail:Tan maiphai room for rent@saigonnet.vn

 ここ数日間は、ホーチミン近郊は探訪したが、肝心のホーチミン市内は攻め切れていない。 今日は遠出せずにゆっくりと ホーチミン市内観光をしよう。 何といっても今晩はホーチミン市内でワクワクなイベントがあるのだから・・・(後述)

 午前中の予定は昨夜のうちに考えていて、チョロンと呼ばれるチャイナタウンに行くことにした。 バスルートマップによるとブイビエン通りの1本南側のチャンフンダオ通り(Trang Hung Dao)を、 チョロン行きのバスが通るようだ。しかもバスの番号はわかりやすい01番。

 バスの中でおじさんが声を掛けてきた。 彼は華僑とのことで、「我々華僑と日本人は似ているが、ベトナム人は風貌が違う。」、 「ベトナム人は困った連中だ。」などと、ベトナム人の悪口を並べ立てる。
 余程ベトナム人に酷い目にあわされたのかも知れないが、満員バスの中は簡単な英語を解せないベトナム人ばかりとは限らないのに、 ある意味勇気のある人だ・・・ それとも、ベトナム人の方が度量が大きくて、分かっていても聞き流しているのだろうか?

ビンタイ市場  バスに揺られること数十分、バスはチョロン(Cholon)に到着した。
 チョロンのランドマークはビンタイ市場(Cho Binh Tay)である。
 ホーチミン中心部にあるベンタン市場(Cho Ben Thanh)と名前が似ていて紛らわしいが、外見上も時計台がシンボルであるのは同じで、 混乱するところである。  実際に入ってみると、雰囲気が少し違う、ビンタイ市場の方がかなり大きい上に、二階建てになっている。(ベンタン市場は一階のみ)
 また、ベンタン市場が観光客向けの土産物店街の要素が大きいのに比べて、ビンタイ市場は問屋街といった様相だ。(値段も若干安いかも)

 昨日シンカフェのメコンデルタツアーで買い捲った、「メコンデルタツーでしか買えないココナツキャンディー」 と同じパッケージのココナツキャンディーがうず高く積まれている。 しかも値段はこちら方がかなり安い・・・
 (もう!田中さんったら!) まあ、シンカフェはフェアトレード(発展途上国からの購入に対して適正な対価を支払う)を提案しているということね。っと、 好意的に解釈するのであった。 もっとも、シンカフェがキャンディー業者から法外なバックマージンを取っていないとすればの話だが・・・

 会社の同僚OL達のために小物を買い込む。 確かにかばん等はすごく可愛いデザインで、手頃な値段である。
 大量にお土産をGETするなら、ベトナムコーヒー用のアルミフィルターがお勧め。何といっても1万ドンで10個も買えてしまうのだ・・・

鶏市場  しこたま土産を買い込み、ビンタイ市場を後にした。 ここチョロンは中華街なのだが、何となく実感が沸かない。
 香港、シンガポール、クアラルンプール、台湾 と中華系の人の街には一種独特の雰囲気があるのだが、ここチョロンは他の街とは 違って、中華街的な雰囲気がない気がする。
 鶏市場に出くわす。 未舗装の土の上を鶏が動き回っている、市場というよりも鶏舎の中という感じだ。 バイクで乗り付けて、 鶏をバイクの籠に放り込んで去っていく、ベトナム版ドライブスルーってか・・・

教会外観 教会内観  辺りには教会やら寺院が点在している。 かつては中国文化の影響を受け、フランスの植民地経験があるベトナムとしては、 当たり前なのかも知れないが、社会主義国ということが全く感じられない。 教会は結構立派な作りで、有名な建物なのだろうけど、 まともなガイドブックを持たない私には、よく分からない。 立派な寺院にも重要文化財風の銘板が付いているのだが、参拝者や観光客は全くいない。

寺院 寺院の銘板  ベトナムって国は、カフェやホテル等の民間はやる気満々なのに、政府の観光政策は全然やる気なしって印象を受ける。
 まぁ、そこが過度に観光地化されていないベトナムの良い点とも言えるのだが・・・

30円定食  街角の路上で昼ごはんを食べる。 ご飯の上におでん風のおかずが乗ったものに、冬瓜のスープが付いてしめて4千ドン。
 日本円で僅か30円程度なのだが、これも実に美味い。 潔癖症の人にとっては卒倒しそうなシチュエーションの店ではあるが・・・
 自慢ではないが、外国で食あたりの経験は無い。 冷静に考えれば、同じ人類が平気で食べているものを、日本人が食べて、 そう簡単には死ぬ訳はないのだが。
 甘い考えかも知れないが、外国での日本人の食あたり騒ぎは「病は気から」の要素が大きいんだと思う。

 帰りも同じ01番のバスで揺られているうちに、いつの間にか爆睡モードに突入していた。 こんな無警戒な状態ではスリが危ないって話もあるのだが、ちゃんと貴重品を管理していなければ、日本国内だって危ない訳であるし・・・
 貧乏旅行の本質を「自己責任」と評する人もいるが、私はそんな甘いものではないと思う。 仮に安宿やツアーバスの中で盗難の被害に遭った場合、 嫌疑をかけられる周りの人々の不快感や、巻き込んでしまう関係者のことを考えると、「自己責任」って言葉は空しく響く気がする。
 とはいえ、そんな偉そうな事を言っている私自身が、食中毒や伝染病のリスクを犯しているは自己矛盾しているのだけれど・・・

教会外観  バスはベンタン市場の前を経由して、終着点のリバーサイドホテル近くのロータリーに到着した。 前回のドンコイ通りは駆け足だったので、 改めてじっくり歩いてみることにしよう。 ここドンコイ通りにもランドマークとなる教会が存在する。 こちらはレンガ造りで重厚な雰囲気 を醸し出している。
 少し北に歩くと、先日の夜に訪問したことのある中央郵便局に到着した。

中央郵便局  夜はライトアップされて分かりにくかったが、昼間に見るとかなり年期の入った建築物である。(大阪の中ノ島公会堂に似ていなくも無い。)
 郵便局の中には、手紙や葉書を書くためのテーブルとベンチが設けられていて、数人の人が手紙を書いている。 私もその中に 混じって昨日の夜に買っておいた絵葉書を書くことにした。
 生来の筆不精かつ、字が汚いことがコンプレックスの私にとって、手紙を出すということは滅多にないことなのだが、旅先から 葉書が届くのって、とてもロマンチックだし、何といっても数ヶ月前にフランスに嫁いだ知人の女性(日本人)に、便りを出してみたい と考えていたのだ。

 手紙を書いていると、あたりからヒソヒソ声が。 見回してみると向いに座っている女性が書いた手紙を読み返している。  目が合うと、彼女は微笑みを返してくれる。 しばらくしてから、彼女は声を掛けてきた。

照れるユンちゃん 「あなたは日本人?」
「そうそう。 ここで何してんの?」
「外国の知り合いに手紙を出していたの。ところで、今から何か予定あるの?」
「うううん。 ブラブラしてるだけやねん。」
「じゃあ、私が街を案内してあげるよ。」

 Oh My God!! 逆ナンではありませんか!

 東南アジアでの逆ナン?遭遇は初めてではない。 数年前にシルクエアのシンガポール人スチュワーデスにアドレスを 手渡されたこもあるのよね・・・ 自慢はこのくらいにして。

 ここでも、完全に無警戒な私は二つ返事で、彼女に付いていくことにした。
 彼女の名前はユンちゃん(Huynhちゃん)。 ホーチミンの外国語大学で観光を学ぶ学生とのことである。 大学では英語と日本語の他、 韓国語も習っているらしい。 25歳と、学生にしては歳をくってはいるのだが、童顔で可愛い女性だ。
 彼女は私をスーパーカブの後ろに乗せると、バイクの群れの中に走り出した。(ベトナムではホンダのスーパーカブが溢れている。  恐らく本物だと思われるが・・・)

戦争博物館 戦争博物館  「どこが見たいの?」と聞かれて、とっさに思いつくのは戦争博物館しか無かった。
 「実は私も戦争博物館に行くのは初めてなの。」と意外な反応。 「大学の先生が行っといたほうがいいよ、って言ってたので、 戦争博物館に行きましょうよ。」ということで、行き先は決定。

 戦争博物館(戦争証跡博物館)は文字通りベトナム戦争をテーマにした博物館であり、中庭に並んだ、米軍の戦車やヘリコプターがまず目を引く。
 屋内の展示コーナーはベトナム戦争の年表。 累々たる死体の山などの記録写真や、枯葉剤による奇形胎児のホルマリン漬けなど、 ショッキングなものも多数ある。 しかしながら、想像していたものと違って全体的に悲惨な感じはしない。 クチトンネルでも同じことを 感じたのであるが、日本の同様の展示やプラトーンが悲壮感を強調しているのに比べて、ベトナム側は戦勝の喜びを強調しているように 感じるのだ。

 正直なことを言うと、映画プラトーンは大嫌いなのだ。 この映画でオリバー・ストーンは戦場には良心的なアメリカ兵も いたという偽善的な内容を描きたいのだろうけど、戦争を直視できていないというか、潔くないというか、白けてしまうのだ。
 むしろ、フルメタル・ジャケットでのスタンリー・キューブリックのシニカルな視点の方にリアリティーを感じるのは私だけだろうか。

ユンちゃんと記念撮影  展示コーナーの最後にはベトナム戦争を撮影したジャーナリストの特集コーナーがあり、当然ながら日本人初のピュリツァ賞 を受賞した、沢田教一も遺品とともに展示されている。 彼の存在を知らない人も、かの「自由への逃避」は教科書でもお馴染みで誰もが知っているだろう。

 ほぼ私が生まれた頃に撮られた写真では、彼の目線の先で困窮するベトナム女性が描写され、現在の私は目の前の美しいベトナム女性ユンちゃんに鼻の下を伸ばしている。
 面白い対比ながら、激動の歴史を実感させられるのであった。

チェ  彼女とお茶をしたかったが、一度家に帰らなくてはならないらしい。 私も別件のイベントがあるので、夜10時にベンタン市場前での 再開を約束して、一旦彼女と別れた。
 帰りにベンタン市場に寄ってフードコートのデザートコーナーを攻める。 ベトナム料理は随分堪能したが、スイーツ系は未攻略なのだ。
 ベトナムにはシュークリーム等のフランス系スイーツも潤沢らしいが、ここは伝統的ベトナムスイーツのチェ(Che)を食べる。  早い話が、クラッシュアイスの入った冷たいぜんざいである。 甘さが強烈かなと思ったが、比較的甘さは抑え目である。  甘みの感覚も日本人とベトナム人は近いかも知れない。

 宿に戻るとボチボチ6時である。 シャワーを浴びた後、一応本日のメインイベントのために、長パンツに着替える。
 ベトナムに来る際に友人から勧められた場所が2つあって、1つはクチトンネル、もう1つはマンダリン(Mandarin)という名前の 高級レストランであった。 本日のメインイベントとは、そう、そのマンダリンでの食事。 しかも謎の美女みゆきたん(日本人)との デート形式なのだ。

 マジェスティックホテルのロビーに彼女は現れた。 黒いワンピースに色白の肌、日本国内では当たり前の格好ながら、 ドンコイ通りを闊歩する中途半端にカジュアルな服装の日本人女性どもとは、明らかに峻別される雰囲気を醸し出している。
 彼女の宿泊先は、ここマジェスティックホテル。 観光よりもホテルステイを楽しむ彼女もまた一人旅である。
 旅のスタイルは違えど、一人旅で共通する悩みは同じ 「ちゃんとしたレストランには一人では入りにくい」という事。

マンダリンの内観  サイゴン川沿いに5分ほど歩くと、目的地のマンダリンに到着した。 高級レストランという割には、外観は民家のようで、 小奇麗で上品ではあるが、あまり目立つ存在ではない。
 内装はゆったりとした感じで、テーブルや調度品もアンティーク風でセンスがいい。まさに日本人好みの店である。 客は西洋人が過半数で、 残りを日本人らしき人々が埋めている。 ベトナム人風の人は外国人の同行者はいるが、ベトナム人だけのグループらしき一団は、 私が見た限り確認できない。 確かに街の食堂に比べると高いレストランかも知れないが、ベトナム人としてはわざわざ高い金を出して、 いつも食べているベトナム料理を食べるもの馬鹿馬鹿しいのかも知れない。

揚げ春巻き(チャゾー) 鴨のオレンジソース  揚げ春巻き(チャゾー)や鴨ローストのオレンジソースなどのメニューとビールを頼む。 ビールはサイゴンビールも333もなく、タイガービールと 外国ブランドのものばかり。
 味もなかなか上品な味付けで、どのメニューもなかなか美味しい。 もっともベトナム料理自体が、どこの店でも美味しいので、 感動的な美味さということではないのだが・・・
 最終的な会計は二人で25US$。 高いか安いかは判断に困るが、一般的な物価からするとかなりの高級レストランだ。

 謎の美女みゆきたんは、これからベトナムを縦断して、ハノイから出国するらしい。 もちろん、貧乏旅行者ご用達のオープンバスなどとは無縁で、 当然飛行機の利用である。 今迄のエピソードを彼女に話すと、彼女は一言、「東南アジアは日本人男性天国ね。」と。  (ちなみに彼女曰く、ヨーロッパは日本人女性天国らしい。)
 なるほど・・・、今更ながら頷いてしまうシンプルにして本質を突いた指摘だ。 東南アジアに行ったきり帰ってこない日本人男性が多いのも、 天国を想像させるものがあるのが、東南アジアに漂っているフェロモンなのかも知れない。 このフェロモンに毒されかかっている私である。

 食事を終えて、時計を見るともう10時だ。 しまった! ユンちゃんとの10時の待ち合わせに間に合わないではないか!
 謎の美女みゆきたんに事情を説明し、慌ててタクシーに飛び乗る。 ベンタン市場に到着した時点で既に10時30分を過ぎている。
 あたりを必死に探し回ったが、彼女の姿は見当たらない。 見ず知らずの男との約束に30分も待ってくれることを期待するなんて、 我ながら呆れるほど甘い発想だ。 というか、彼女はそもそも約束の時間に来なかったのかも知れない。

 謎の美女みゆきたんの「東南アジア日本人男性天国論」を鵜呑みにして踊らされた、滑稽な私が少し恥ずかしくなった。
 「冷静に考えてみれば、当然の結果だから落ち込むことはない」、と何とか自分を奮起させて、トボトボと宿に戻るのであった。


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