カオサンロード&アユタヤへ(9月24日)

 D&D INNの薄い壁のせいか、昨日のカオサン(Khao Sarn Rd.)の喧騒が深夜遅くまで続き、あまり快適な睡眠とは言えなかった。  9時過ぎの遅い起床の後、チェックアウトして宿を出ると、静まり返ったカオサンロードがそこにはあった。
 みんな夜型なのか、それとも既に移動を始めているのか??? いずれにしても、カオサンにおいては中途半端な存在の私。

怪しい屋台  朝食は是非ともタイ人が食べているものを食したいと思い、路地探検に出かける。 カオサンと周辺の道との間には多くの路地があり、 まるで迷路のようになっている所もある。

 入り組んだ路地(といっても屋根があるが・・・)の道端にある、とびっきり怪しげな屋台に目を引かれた。
   路地沿いに様々な料理を並べており、客は見たところタイ人のみであるようだ。 まさに求めていた雰囲気だ・・・

怪しい屋台の料理
 焼き飯と揚げ春巻きを頼むと、手際よく運ばれてきた。 値段は100円もしないくらいであるが、ボリューム感があって、なかなか美味い。
 昨日まで朝食としていた、ベトナム風フランスパンサンドも大変美味かったが、こういうしっかり系の朝食も捨てがたい。
 高級ホテルや中級ホテルの朝食ビュッフェも悪くないのだが、こういった素朴な喜びは貧乏旅行でしか味わえないのだなと、 改めて貧乏旅行のメリットを再認識する。

 カオサンの周りをさらに散策してみる。 カオサンの西側には大きな寺があり、この周りにも数多くの安宿街が集まっている。  また、このあたりでは、薄紫色の壁のサワディというチェーンが数軒の安宿を経営しているようだ。
 特に寺の西側の通りには良さげな宿が並んでいたので、部屋の空きを聞いてみたが残念ながら満員とのことである。

ムエタイのジム  横道に逸れてみると、市場があったりと生活臭が漂う地域である。 屋台の焼きバナナをトライしてみたが、ホクホクしていて、 小芋を食べているようだった。
 そんな街の中にムエタイのジムを発見した。 以前にルンピニスタジアムのリングサイドででムエタイを見たことがある。
 年端もいかぬ少年が、お互いの贅肉をそぎ落とした脇腹に、膝をただひたすら蹴りこむ様を見て、何とも言えない気持ちになったのだが、 このジムの少年たちはいたって明るい表情である。 ムエタイは完全に生活の一部として定着しているようだ。

 カオサンを一通り徘徊した後で、折角タイで一日まるまる使える今日なので、少し遠出をしてみることにする。

 行き先はお気軽に日帰りできそうなアユタヤにした。 もともとアユタヤに行きたかったかと、言えば嘘になるのだが、 今日の目的はズバリ、タイの鉄道に乗ること。
 恥ずかしながら、タイ3回目にして初の鉄道体験である。

 カオサンのバス停からバンコク中央駅(ファランポン駅)の方向に走っていると思われるバスに適当に乗り込んでみた。  だが、線路沿いの停留所までは来たのだが、駅舎らしきものは見当たらない。
 通りがかりのOL風の女性に尋ねてみると、駅には歩けないこともないが、かなり遠いとのこと。  彼女は近くにいたトゥクトゥク(3輪タクシー)の運転手をつかまえて、値段交渉してくれた。
 「トゥクトゥクでいい? でも絶対に40バーツ以上は払っちゃだめよ!」 急いでいるにも関わらず、彼女もまた涼しい顔で 親切にしてくれた。 ベトナム人の濃い口の親切、タイ人のあっさりとした親切、違いはあれども、東南アジアは最高だ。

バンコク中央駅(ファランポン駅)  アユタヤ行きの列車は11時丁度に発車するらしい。 アユタヤが終点なので乗り過ごす心配も無い。 チケットは僅か15バーツ(約45円)  バンコクとアユタヤ間は大阪と姫路間くらいの距離があると思うのだが、激安である。 物価は1桁どころか2桁くらい違う。

 バンコク中央駅(ファランポン駅)はターミナル状の行き止まりになっており、アーチ状の屋根などを見ても、カルカッタのハウラー駅を 彷彿させる。 日本の駅よりもヨーロッパ調のデザインに近いのだろうか。

 列車は定刻どおりにゆっくりと走り出した。(というよりひたすら徐行運転をはじめた。)
列車の内部は対面式のビニール張りシートで、思いの他、まともな車両である。 空調は無いのだが、空けた窓から吹き込む風が心地よい。

 突然、怪しげなおじさんが登場して、私の隣に座った。 彼はアルバムを取り出すと、私に見るように勧めた。 中には同じ列車の中で撮ったであろう、 外国人女性(ほとんど日本人女性)との2ショット写真の数々であった。
 英語がほとんど喋れない彼の身振り手振りから察すると、彼はアユタヤに住む慈善事業家であり、バンコクへはこの列車をよく 利用するらしい、この車内で出会った女性との記念写真をコレクションしているようだ。
 つまり、ナンパ自慢ってことねと、半ば呆れる私を尻目に、彼は次から次へと乗客にアルバム自慢を続けるのであった。

アユタヤ駅  昨日の寝不足のせいか、一眠りした後に目覚めると、辺りはすっかりのどかな風景に変わっていた。  周りの乗客が降車支度を始めているので、もうすぐアユタヤに到着するようだ。
 列車は線路の途中で止まってしまった。 まだ駅に付いていないと思うのだが、みんなはどんどん列車を降りていく。  仕方なく私も降りると、線路と同じ高さにプラットホームのようなものが。  アユタヤ駅にはホームに屋根がなく、駅舎も小さいため、私が駅とは気づかなかったでけであった。

 アユタヤ駅自体は田舎の駅という風情なのだが、一歩駅を出て、渡し舟(2バーツ必要)を渡ると大きな街が出現した。  国際的な観光地であるので、当然といえば当然であるのだが・・・

グリーンカレー  1時を過ぎているが、ここで遅い昼食を取る。 大きな道路沿いにあるオープンカフェでグリーンカレー(ゲーン)を頼む。  何となく水っぽくてあまり美味しくない。 全然辛くない・・・

 日本では有名であるが、本場の屋台ではあまり出てこないメニューってのは世界各地にあるのだが、 ここタイにおいては、トムヤムクンと、このグリーンカレーがその類にあたる。
 勿論、タイ人もグリーンカレーは普通に食べるだろうし、コンビニには缶詰のカレーが多数並んでいるのであるが、 何故か屋台で見かけることは稀有である。 やはりタイの屋台の王様はバッタイ、 女王は青パパイヤサラダということだろうか。

遺跡  隣の席の西洋人バックパッカーは、ひたすら本を読んでいる。 40歳くらいのアメリカ人とのことで、 彼は日がな一日こうして過ごすそうである。 よく見るとバックパッカーにしては身なりは小奇麗である。  彼もアメリカ版サラリーマンなんちゃってバックパッカーに違いないと、勝手に決め付けるのであった。
 炎天下に遺跡巡りをしようとする私を見る彼の目は、むしろ「お気の毒に」という感じである。
 典型的な貧乏性の日本人である私には真似の出来ない旅行スタイルだ。
 店を出てしばらく歩くと、遺跡が点在する地域となった。 全般的に石造りの寺の廃墟が多いのだが、比較的新しいそうな寺に 観光客が集まっているので、私も入ってみる。

大仏? 大仏殿?  何となく建物の雰囲気は東大寺の大仏殿のようで、中にはやや小ぶりながらもキンキラな大仏像が鎮座している。
 やはりコンセプトは大仏殿のパクリなのだろう、明らかに周りの遺跡とはかけ離れた後世に作られた寺院である。

 パッケージツアーのコースを調べてワクワクで来た人であれば、この寺院を堪能しつくすべきなのだろうが、 45円鉄道旅行で遠足気分の私には・・・

アユタヤっぽい風景  大仏殿?の隣には、古いバゴダが林立している。 「これぞ、イメージしていたアユタヤっぽい風景やな〜!」と妙に納得してしまう。
 お金を払ったら中に入れるのだが、私にとっては遠くで見ているだけで十分であった。

 もうアユタヤに関してははお腹一杯である。 そもそもタウンウォッチング&ヒューマンウォッチング派の私にとって、 遺跡巡りはそもそも余り興味をそそられるものではない。 本来の目的が鉄道旅行だったので、十分に目的は達成されているのである。  このアユタヤにもはや長居は無用だ。

 行きは鉄道だったので、帰りは高速バスで帰ってみる。 クーラーが利いていて快適であるが、料金が100バーツもする点がやや難である。
 しかも渋滞緩和のためだろうが、バスが到着するのはバンコク中心部ではなく、バンコク北部の近郊にある北バスターミナルである点も今一だ。
 北バスターミナルからBTS(スカイトレイン)のモチット駅は目と鼻の先なのだが、いかんせん間に太い幹線道路が横たわっているため、 近距離ながらも路線バスかタクシーが必要である。 私も仕方なく3.5バーツを払って路線バスに乗る。

BTS  乗り継ぎは不便だったが、本日の鉄道の旅の2つ目の目的はこのBTSに乗ることであった。 以前にバンコクに来た時には、 まだ開通していなかったので、BTSも初体験な私であった。 高架である点も、駅の作りも、車両の雰囲気もクアラルンプールのLRTにそっくりだ。  便利なのだが、全然味気ない・・・
 乗っている高校生たちは皆色白&ロン毛で一見するとタイ人とは分からない。 アジア均質化の波は、ここバンコクにも急激に 押し寄せているのだろうか。

 バンコクの中心であるサイヤムスクエアで降りて、辺りをぶらぶらとしてみる。 ワールドトレードセンターにも足を伸ばしたが、 ここらあたりまで来ると、日本の都会と何ら変わらない風景が広がっている。

ジム・トンプソンの家 ジム・トンプソンの家  ジム・トンプソンの家(現在は博物館になっている)にも行ってみたが、午後4時を回ると閉館するようで、残念ながら中には入ることは出来なかった。
 そういえば、今晩の宿を決めていなかった。

 カオサンに帰らねば・・・

 サイヤムスクエアとカオサンの間には鉄道は無く、一見するととても移動が不便であるのだが、渋滞知らずのとてつもなく 便利な乗り物が存在するらしい。 何を隠そう、この乗り物に乗ることこそ、本日3つ目の目的である。

水上バス  ジム・トンプソンの家の近くにある運河のほとりに、その乗り物は現れた。 そう、運河を往来する水上バスである。
 桟橋から乗り込むのはある意味命懸けだ。 一歩間違うと凄まじい異臭がするドブ川に転落してしまうのだから・・・
 船のへりにはヘルメットを被った乗務員が2〜3名立っており、乗客が乗り込むとボートの周りをビニールシートで包む。
 水上バスというと、淀屋橋と大阪城を結ぶ、あのチンタラしたものを連想していたのだが、走り出したこの水上バスは凄まじかった。
 狭い運河を全速力でボートが駆け抜ける。 しかも対向するボートとすれ違うのだ・・・

 ああ、なんてクールな乗り物なのだ! 凄い、凄すぎる。 運河から吹き上げられる強烈な臭気も、この興奮の前では 全く気にならなかった。

水上バス乗り場 黄金のバゴダ  本当にあっという間にカオサン近くの桟橋に着いてしまった。 桟橋の上には目印なのだろうか、白い祠のようなものがある。
 頭上には黄金に輝くバゴダ(Golden Mountain)が妖しく光っている。
 戦争のモニュメントのある広い道を進んでいくと、見覚えのあるカオサンロードに到着した。
 昨日の寝不足もあるし、この旅最後の夜でもあるので、奮発して中級ホテルに泊まることにした。

 カオサン通りの一本北、ランブトリ通り(Rambuttri Rd.)沿いにある、 ヴィエンタイホテル(Viengtai Hotel)が今晩の宿だ。  ツインルームのシングル使用、朝食付きで、1200バーツと、タイの物価としてはそこそこの金額であるが、 フロントには民族衣装を着た美女が微笑んでいる。
 毎度の事ながら、このパターンで部屋を決めてしまう私なのであった。

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ヴィエンタイホテル内部 ヴィエンタイホテル外観  多少年期は入っているものの、部屋は広くて落ち着いた内装である。 外部の喧騒も全くといって良いほど気にならない。
 一人でくつろぐには十分すぎるほどのホテルである。 おかげで快適な目覚めを迎えることができた。  (朝食は不味かったが・・・)

 Vienthai Hotel 住所:42 Rambuttri Rd., Banglampu, Bangkok 10200
  電話:(662)280-5434-45 E-mail:info@viengtai.co.th http://www.viengtai.co.th

 帰りの便は直行便でなく、マニラ経由なので、10時までには空港に到着しなければならない。
 ここは冒険を避けて、リムジンバスで空港を目指すことにする。 カオサン・ロードの西の端にある、サワディ系列の宿の前に、 リムジンバスの乗り場がある。 料金は100バーツ。  乗ってみたものの、乗客は私一人、流石、カオサンの住人は徹底的に交通費をケチるのだろうか?

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 帰国便のバンコクからマニラまでの区間は、出稼ぎ労働者風の男性が多数で非常に怪しい雰囲気である。
 彼らのほとんどはマニラで降り、代わりに大量の女性と、「東南アジアに同化し、日本人ばなれした」日本人男性 (特におじさん)が乗ってきた。

 私は周りには、ピンクのスーツを着た十数人の美女達がとり囲む形となった。
「この制服は何?」と訊ねると、
「エージェントから支給された制服なの。」と。

??? よくは分からないが、人生の縮図が凝縮されている機内だ。

 思い返せば、今回は3ヶ国の東南アジア女性と接する機会のある旅だった。 一つ言えることは、どこの国の女性も素敵だった。
 安直な結論であるが、東南アジアにはまってしまう日本人男性の気持ちが少しは分かった気がした。

 でも、はまってしまう人生もまんざら悪くないかも知れない・・・


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