ルアンパバーンへ
目が覚めると、もうボーディングが始まっている。
タイは航空会社の競争が激しいところで、タイ航空やバンコクエアウェイズのような大手の他に、
格安航空会社と呼ばれる新規参入会社が複数存在する。
格安航空会社の中でも代表的なものは、
エアーアジアというマレーシア資本の会社である。 例えば、バンコクとウドンタニ間の運賃が、
タイ航空の場合は1700バーツ
なのに対して、エアーアジアの最安値は1/3以下の499バーツである。(ただし、燃料税と保険料で約2倍の値段になるのだが)
対するタイ航空も座視している訳ではなくて、なんと自ら傘下に格安航空会社を作ってしまったらしい。
このタイ航空傘下の格安航空会社こそ、今回利用するノックエアーである。
こちらの運賃もそれなりの価格で、タイ航空の約半額の915バーツであった。
鳥のペインティングの個性的機体とは対照的に、機内はタイ航空そのものであった。 格安航空の特徴としてミール、ドリンクは有料である。
機内食ハンターとしては、100バーツのブレックファーストボックスを購入してみる。 クロワッサンとタルトにフルーツジュースと、
コストパフォーマンスはまあまあか。
ウドンタニ空港を出ると、リムジンバスのチケットカウンターが並んでおり、ここでラオスとの国境の町であるノーンカイまでの
チケット(100バーツ)を購入する。(リムジンバスとは言っても、ただのワゴン車なのだが・・・)
どちらかというと辺境部にも関わらず、道路整備状況は極めて良い。
片側4車線はあろうかという道路を、渋滞知らずにすいすいと走り、約1時間でタイ側のイミグレーションに到着した。
出国審査の後、タイ・ラオス国境の橋であるフレンドシップブリッジ(友好橋)を渡るマイクロバス(10バーツ)に搭乗する。
ラオス人の買出しツアー客だろうか、バスの中は荷物で溢れ返っている。
フレンドシップブリッジのタイ側にはタイ国旗が翻り、メコン川中心部を超えるとラオス国旗に変わる。
陸路での国境越えというのは、いとも簡単すぎて、日本人にはなかなか実感しづらいものがある。
ラオス側イミグレーションでは、まずアライバルビザを申請する必要がある。 本来は30ドルなのだが、土日祝および夜間には時間外手数料として
1ドルを請求される。 20分くらいでビザが発行され、入国審査に移る。
施設利用料なのか、入国税なのか謎の10バーツを支払った後に、晴れてラオス入国である。
この時点で午前9時前である。ルアンパバーン行きの便に搭乗するためには、後1時間でヴィエンチャンの空港に着かなければならない。
少し焦った私は、とまっていたリムジンバスに乗り込んだ。 他のリムジンバスが客待ちしているにも関わらず、
このリムジンは私一人を乗せただけですぐに発車した。 あれ? そう言えばどさくさ紛れに15ドルも払ってしまったぞ。
冷静に考えてみると謎は解けた、このリムジンは最大8人で15ドルをシェアする乗り合いリムジンであるのだが、
空港に急ぐと言い張る私のために1台貸切にされてしまったのだ・・・
どうせならタクシーにしとけば、もう少しは安かったはずなのだが、今更しょうがない。ボラれたという訳でも無さそうだし、まあいっか。
ヴィエンチャン市内を横目で見ながら、午前10時前にはヴィエンチャンの国際空港である、ワッタイ空港に到着した。
中央には立派なターミナルがあるが、これは国際線ターミナルであり、隣の古ぼけた建物がこれから利用する国内線ターミナルだ。
待合室で座っていると放送で私の名前を連呼している。 最終呼び出しにしては、出発までは時間があるはずなのに何故?
実は、ラオスでは国内線でもパスポートコントロールが必要であったようだが、うまくすり抜けてしまっていたようだ。
退屈なのでとなりの母娘に話しかけてみると、意外にも片言の日本語が帰ってきた。
どうやら1週間だけ東京の清瀬に研修で滞在していたことがあるようだ。
やはりラオスで飛行機を利用するのは外国にいけるような上流階級なのだろう。
しかし、なかなか飛行機は来ない。
これか?
待合室の客の数にしてはえらく機体が小さいような・・・
ルアンパバーン便より後の便の乗客が搭乗していった。
これが噂の外務省が搭乗自粛を求めている、中国製旅客機なのかも知れない。
これか?
どうやら、これで正しいようだ。
結局2時間の遅発となってしまった。 2時間前に空港に来たわけだから、4時間を待合室で過ごしたことになる。
生まれて初めて乗るプロペラ機に興味津々である。 ATR72というヨーロッパの飛行機で日本では見ることができない。
名前からして72人乗りかと思いきや、席は74席あった。
客室乗務員がめちゃくちゃ可愛い! まずはパチリと・・・
機体を先程格納庫から出してきたようなので、空調が全く効いていない、まるで蒸し風呂状態だ。
最後の乗客が搭乗すると、間髪いれずにプロペラが回り始めた。
ラオス航空は早発の可能性があると言われているが、要するに全ての客の搭乗が完了した時点で出発するということなのだろう。
1時間弱のフライトで無事にルアンパバーン(Luang Phabang, Luang Pabang)に到着した。
ルアンプラバン(Luang Phrabang、Luang Prabang)と呼ばれることもあるが、どちらの発音が正しいのかは良くは分らない。
ルアンパバーン空港の構内にはタクシーチケットのカウンターがあり、町の中心部まで一律5.5ドルの料金である。
(ルアンパバーンでタクシーと言うと、軽トラックの荷台に座席をつけたような、トゥクトゥクタイプのものを意味し、
乗用車タイプのいわゆるタクシーは全く走っていない。)
「誰かとシェアしたらどうなる?」と聞いてみたが、料金は1人の場合と変わらないとの返事である。
後日、街中でトゥクトゥクを拾ったときにも感じたが、ルアンパバーンでの料金体系は、一台いくらよりも一人いくらというのが一般的なようである。
宿の情報を事前にネットで調べたら、コールドリバーゲストハウス(Cold River Guesthouse)という宿が日本人宿として人気が高いようだ。
特に他に情報もないのでこの宿を訪ねてみる。
コールドリバーゲストハウスは、メコン川支流のカーン川沿いに建つ小さな宿である。 メコン川沿いに宿が集中しているのに比べて、この宿の周辺は非常に静かだ。
空き部屋は2部屋あって、リバービューのダブルルーム(6ドル)と山側のツインルーム(5ドル)、ともにホットシャワー付きである。
私はバルコニーのあるダブルルームを選択した。 ちなみにミネラルウォーター飲み放題、バナナ食べ放題で、週1回は無料ディナーを振舞ってくれるらしい。
シャワーで汗し、早速町に繰り出してみる。 ルアンパバーンに関する情報は極めて少ないため、
藤井寺市立図書館より借りてきた「○○の歩き方」の地図を頼りにカーン川に沿って散歩してみる。 この「○○の歩き方」は情報は古いわ、間違っているわで、
個人旅行者からは評判が悪いのだが、ことマイナーな国の地図が必要な場合に限っては結構重宝する。
(ちなみに、コールドリバーゲストハウスも簡単ながら紹介されている。)
カーン川には多数のドラゴンボートが浮かんでいる。 どうやら今日はドラゴンボートレースのお祭りのようだ。
町中には子供が溢れ、楽しそうに露店を冷やかしている。 アジアの観光地というと子供の物売りを連想するのだが、
ここルアンパバーンの子供たちは、我々外国人観光客なんて眼中にない感じだ。
「眼中に無い」というのは商売の対象としていないという意味で、もちろん愛想が悪いということではない。
むしろ老若男女を問わず、目線が合うと自然な微笑みが帰ってくる。 ベトナム人の微笑みには多分に計算がありそうだが、ラオス人の微笑みには、
心よりのホスピタリティーを感じてしまう。
タイ人は彫りが深く、ベトナム人はのっぺりしている感があるが、両国の中間に位置するラオス人の風貌は、日本人に非常に似ている。
なんとなく日本の地方都市を訪れたような、不思議な親近感を感じる。
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ルアンパバーン(Luang Prabang)はルアンプラバンとも呼ばれる、ラオスの古都である。 第二次大戦後くらいまでは実際に国王が住んでいたらしいが、
社会主義政権化では当然のごとく国王は地位を剥奪されたらしい。 ただし、開放政策の中で、ラオス政府は王宮の名残を観光資源として活用しているのが、何とも皮肉な話だ。
市内の銀行で両替をしてみる。 ラオスの通貨はキップという単位で1ドルが1万キップの固定レートである。 ベトナムで1ドルが1万5千ドンと等価に使えるのと似ている。
当然ながらドルが普通に流通しており、端数のお釣りをキップでくれる。 タイバーツも利用可能なので、3種類の通貨が入れ乱れて流通しているのだ。
食堂でラオス北部名物のカオソーイという麺を注文してみる。 米の平打ち麺に赤いスープ、挽肉のトッピングと、見た目は坦々麺に似ているのだが、
こちらはトマトベースの酸味のあるスープだ。 おいしい!
ルアンパバーンの中心はメコン川とカーン川に囲まれた狭い地域であり、その中央部にはプーシーと呼ばれる小高い山がそびえている。
山頂にある黄金のバゴダは夜間ライトアップされるので、この町のランドマークとなっている。
切り立った山には数百段とも言われる階段があって、不摂生な体には実にきつい。 山頂に到着した時には既に日没が迫っていた。
この山頂から見る夕日は絶景とのことで、多くの西洋人観光客が集まっていた。 とは言っても、マイナーな観光地、ルアンパバーンのこと、
芋の子洗い状態でうんざりするというレベルではない。 幸い天気に恵まれ、美しい夕日であった。
まだまだ満腹には至らないので、違う種類の麺を食べることにした。 「○○の歩き方」によると、ナンプ(噴水)広場近くに、
カオピヤックという麺で有名な店があるらしい。
麺の上にスープをかけるのではなく、米の細麺をあんかけスープとともに鍋でグツグツと煮ている。
麺にコシが無いのが難点だが、熱々で供されるのが嬉しい。
例えるなら八宝菜に素麺を入れた感じだろうか・・・ テーブルの上には「おこげ」が置いてあり、好みによって入れるらしい。
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