メコン川とビアラオと私
今朝は5時過ぎに目を覚ました。 ルアンパバーン最後の日にどうしても見ておきたいものがあったのだ。
ルアンパバーンが世界文化遺産であるハード面の理由が、ワット・シェントーンをはじめとする多くの寺院であるとすれば、
ソフト面の理由は人々に息づく仏教への信仰心であり、それが垣間見られるのが、早朝の托鉢である。
まだまだ薄暗い中、宿の人を起こして門を開けてもらい、細い路地を通って大通りに出た。
大通りを渡った所に比較的大規模な寺院、ワット・ビスンナラート(通称、すいか寺)があるため、
この大通りは托鉢を見学するスポットとしては絶好のロケーションのようだ。
昨日の滝ツアーで一緒だったメグさんもデジカメ片手にやってきた。
実は昨日彼女と会ったことは非常に幸運であった。
持参した「○○の歩き方」には、「托鉢は6時から6時半の間」と記述されているのだが、これが大きな間違い。
6時前には托鉢は終わってしまうのだ。
彼女に5時半から托鉢が始まることを教えてもらわなかったら、「○○の歩き方」の誤報を鵜呑みにして、
托鉢を見逃すところであった。
無事に托鉢も見れたところで、お腹が空いてきた。 プーシー山の南側の通りに中華料理店が並んでいるので、お粥の朝食にチャレンジする。
肉団子入りのちゃんとした中華粥で、もちろん挙げパンも準備されている。 ちまきの味付けは少し甘い気がするが、蓮の葉の香りが良い。
本日は月曜日なので、昨日まで街中を遊びまくっていたルアンパバーンの子供たちも、違う表情を見せる。
女子学生の制服は民族衣装の巻きスカート(シンと言うらしい)にブラウスである。 コールドリバーゲストハウスの娘さんも、
制服を着て飛び出していった。 お母さんによると女子学生の髪型はポニーテールに決まっており、結ぶリボンの色も決められているとのこと。
ベトナムでも女子学生は制服としてアオザイを着ていたが、日常生活でアオザイを着る人は稀だった。
一方こちらラオスでは、女性は日常的に巻きスカートを着ている。 巻きスカートが機能性に富んでいる要素が大きいが、
伝統衣装は最もその民族の女性を美しく見せるものであると実感する。
ルアンパバーン最後の時間は、メコン川沿いのカフェにて、まったり過ごす。
ラオス名物の一つでもあるラオスコーヒーを頼む。 西洋式のコーヒーと区別するためにカフェラオと呼ばれるこのコーヒーは、
非常にドロっとした濃厚な味わいだ。 お隣のベトナムコーヒーとも少し違う味である。
日本人の味覚から言って、濃厚さの割には苦味が少ない気がするのだが、ラオス人は練乳を入れないと苦くて飲めないという。
コーヒーというよりもココアを飲んでいる感覚だろうか・・・
インターネットでのルアンパバーン評にあった、「何も無いけど良いところだよ」というのは言いえて妙であった。
もちろん、多くの寺院やメコン川といった観光資源は存在するので、「何も無い」というのは過剰表現なのだが、
ルアンパバーンの良さの本質は、単に観光資源だけでは無い気がする。
ゆったりと流れる時間、変に観光地化されていない雰囲気、穏やかな国民性、
これら全てが何とも言えない居心地の良さを作り上げている。 一言で言うと「癒し」だろう。
しかしながら、観光地化の波は確実にこの町にも押し寄せてくるはずだ。 次回来るときは、きっと違う印象の町に変わっていることだろう。
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荷造りしてコールドリバーゲストハウスをチェックアウトをすると、宿の人が総出で見送ってくれた。
確かにここはフレンドリーな宿だ。 入り口には情報ノートが置いてあって、宿泊者はみんな写真付きでメッセージを残している。
ノートの書き込みからは日本人宿泊者が多いのだが、私の滞在中は、結局のところ日本人客は私を含め4名のみであった。
代わりに、フランス人、イタリア人、スペイン人、スイス人、マルタ人と謎のラテン系多国籍軍団が陣取っていた。
「ラテン系言語同士はそれとなく意思疎通ができるんだ。」と彼らは言っていたが、イギリス人客とウマが合わないのは言語だけの問題ではないようだ。
13時10分発のラオス航空ヴィエンチャン行きに搭乗するために、宿を後にする。
同宿のメグさんは13時30分発のタイ航空バンコク行きに乗るとのことで、またしても彼女とトゥクトゥクをシェアすることにした。
メグさんと別れた後、国内線の搭乗手続きを終えて待合室に座っていると、何故だか出国手続きを終えた彼女さんが、同じ待合室に登場した。
日本では考えられないことではあるのだが・・・
ヴィエンチャン便は定刻より10分程度の遅れで無事に出発した。 往路の便と同じATR72である。 ちなみに座席シートはリクライニング無しで、
機内サービスはミネラルウォーターのみである。 外国人観光客にとって、このサービスの悪さは想定の範囲内であるが、
大金をはたいて乗っているラオス人は少し気の毒な感じもする。
40分余りでヴィエンチャンのワッタイ国際空港に到着した。 空港にはタクシーカウンターがあり、市内までは一律6万キップ(6ドル)となっている。
メグさんからの情報によると、空港を出た所の幹線道路で流しのトゥクトゥクを拾うと、2万キップくらいで市内まで行ってくれるらしい。
彼女のアドバイスに従うことにした。
3百メートルも歩くと、すぐに幹線道路に辿り着く。 道路を渡って町に向かう車を待っていると、
3人のお坊さんを乗せたトゥクトゥクが止まった。 町の中心であるナンプー広場(噴水)までで交渉すると、
5千キップで良いとのこと。
手持ちの現金が不足傾気味である状況で、ラッキーな節約となった。
ヴィエンチャンの町の中心部は極めて簡単だ。 メコン川の北側に沿ってできた町で、
北から、コーンブーロム通り(Khoun Boulom)、サムセンタイ通り(Sam Sen Thai:西方向一方通行)、
セーターティラート通り(Sethathirath:東方向一方通行)、ファーグム通り(Fa Ngum)の大通り4本に挟まれた地域に、
ホテルやレストランが集中している。
ナンプー広場はセーターティラート通り沿いにあり、辺りにはお洒落なフランス料理店やイタリア料理店が点在している。
「○○の歩き方」によると、ナンプー広場の北側、サムセンタイ通り沿いにある「ナンプーコーヒー」という食堂が安くて人気のようである。
「コンニチワ!」 店に入ると愛想の良い美人女将?が片言の日本語で話し掛けてきた。
ポークカレーを注文すると、タイ風のレッドカレーが運ばれてきた。 ごはんもタイ風にジャスミンライスである。
機嫌良く食べていると、「ガリッ!」という嫌な音が。 どうやらカレーに小石が入っていて、奥歯の表面が少し欠けているではないか。
今まで幸運続きだったのが、ここにきてプチ不運に見舞われてしまったようだ。
気を取り直して今晩の宿探しに取り掛かる。 折角なのでメコン川沿いのゲストハウスを当たってみる。
まずは、オーキッドゲストハウスという宿、TV(NHKのBSがOK)とクーラー付きで13ドルとの提示である。
あまり安くは無いが、荷物を早く降ろしたい一心でついつい妥協してしまう。
昨日までのコールドリバーゲストハウスに比べると、部屋はかなり狭く感じる。 安易な妥協に少し反省。
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再びナンプー広場界隈に繰り出してみる。 ルアンパバーンにも増して、ここヴィエンチャンにはインターネットカフェが多数存在する。
どこも店も100キップ/分と統一価格だ。(ルアンパバーンは250キップ/分) 一時間利用しても50セントしか掛からないとは、
なかなかの低価格である。 端末には全てカメラとマイク、イヤホンが付いており、メッセンジャーでTV電話する人も多い。
ネット情報によると、ヴィエンチャンの最大の楽しみは、メコン川に沈む夕日を眺めながら飲むビアラオなのだという。
そんな素敵なシチュエーションをみすみす逃す手はないのだ。
メコン川の河川敷には、野外レストランが数多く並んでいる。
レストランとは言っても、地面にテーブルと椅子を並べただけの簡単なものなので、
ビアガーデンと言った方がイメージが近いかも知れない。
しかも、絶好のロケーションにあるにも関わらず、値段は極めて良心的なものである。
雄大なメコン川に夕日が沈み、対岸にタイの町を望む。
これ以上のビールのつまみは存在しないかも知れない。
後ろの席では西洋人が、携帯でバカンスの状況を同僚に説明しているようだ。
「Laos is relaxing」 いい表現だ。
片手に七輪、片手にスルメの入った籠をもった売り子がやってきた(一皿1000キップ)。
海の無いラオスでスルメとはこれいかにだが、味はまさしく日本のスルメと同じ。
スルメをあてにビアラオをやるなんて、こんな贅沢が許されてもいいものだろうか・・・
ルアンパバーンで出会ったバックパッカー氏は、「ヴィエンチャンには無いもないよ」と言っていたが、
彼が「酒飲みの視点」で判定すれば、もっと違う表現になったであろう。
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ラオスには伝統的な「ラオス古式マッサージ」というものが存在し、ヴィエンチャン市内にも多くのマッサージ店がある。
メコン川沿いの一軒に入ってみる。
タイ古式マッサージがどちらかというとアクロバティックな動きで関節を攻めるのに比べて、
ラオス古式マッサージは地味な指圧が中心だが、これがかなり効く。
ふくらはぎを執拗に攻められて悶絶するも、痛気持ちよさがクセになりそうだ。
一時間たっぷり攻められて、心も体もヘロヘロになった。 これでたったの3ドルである。
「癒しの国、ラオス」だな・・・
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