深センにて中国4千年の歴史を・・・

※デジカメ画像を紛失したので、写真はありません m(_ _)m

 「南北酒店」での2度目の朝。 前日のマカオがイマイチだったせいか、何処か面白い所はないものかと思案する。
 地図を見るとやはり上の方にある中国が気になる。 香港と中国は陸続きであり、地図で見る限りとっても近い。  私は中国には行ったことが無い。 「中国4000年の歴史」やら「本場中華料理」やら色々なフレーズが頭に溢れ、 このチャンスに是非とも中国の地を踏んでみたいと考えるのであった。
 お気に入りのお粥朝食を早々に切り上げた私は、中国へのルートを確認した。 香港から中国へのゲートウェイは、 深セン(センは土へんに川)という都市であり、九広鉄道(九龍と広州とを結んでいるから?) で簡単に深センに入境できるようだ。

 地下鉄と九広鉄道の乗り換えスポットはいくつかあるが、地下鉄観塘線の九龍塘駅で乗り換えることにする。  切符売り場には、広州行きや北京行きの表示があって、何となく国際列車の駅に来たんだと実感が湧いてきた。
 香港と深センとの境(一国二制度なので実質的には国境)である、羅湖までの切符を買う。  香港も中国からは外国扱いであるが、深センも経済特区であり、中国国内において特殊な位置づけの都市である。
 駅員に聞くと、深セン経済特区のみへのビザ(VISA)であれば、羅湖で即日交付とのことである。

 香港にしてはのんびりした車窓風景を眺めること30分足らず、列車は羅湖に到着した。  前方の入り口に向かうと、そこには香港の出境所が。 他の出入口は見受けられないことから、 この駅は入出国者専用の施設と思われる。 一つ手前の駅から、運賃が大幅に跳ね上がっているのは、 ひょっとしたら出国税が運賃に上乗せさせているのかも知れない。

 出境審査を終え、小川にかかる橋を越えると、そこは深セン。 陸路の国境越えは、日本人の私にとってはピンとこない。
 深セン側で階段を上ると小さな小部屋が一つ。 扉には「VISA」との表記が。 これでは、なかなか分かりにくいよなと思いつつ、 中に入ると以外に並んでいる人は少ない。
 香港人はビザは不要であるため、ここにいるのは、その他の外国人、インド人らしき一団と日本人の一団が1組づつ、 しかもみんなビジネス客っぽい。 やはり、観光客として深センを訪れるのは、日本人としてはマニアックなのだろうか。

 深センのみ5日間有効のビザは150HK$、所要時間は30分弱と、意外と簡単な手続で取得できた。  大量の香港人がフリーパスで流れ込むのを尻目に、通算で約1時間、ようやく深センにたどり着いた。

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 深センの町並を見ての最初の印象は、香港と全然変わりがないということ、強いていえば、看板に表記されている漢字が 略字体であるぐらいだろうか。
 まずは中国の通貨である人民元をゲットしなければ。 市内の銀行に行くと「両替できない」と即座に断られた。  その銀行が両替不可なのか、今日が日曜日だからダメなのか良く分からないが、市中銀行は全然両替が駄目みたいだ。  駅近くにあるシャングリラホテルで両替を頼んでみるも、美人フロント嬢は「残念ながら、当ホテルのお客様以外の両替は できません」と丁重なお返事。

 香港人と深センの人では顔立ちや服装に違いがないので、誰が旅行者であるのか良く分からない。  とりあえず、西洋人を探して両替場所を教えてもらうことに。
 声を掛けたスペイン人の女性曰く、入国審査を出たことの中国銀行でしか両替はできないようである。  ついでにツーリストインフォメーションの所在を尋ねると、彼女は笑いながら「ここ深センには、そんなは存在しないの。  貴方の幸運を祈るわ・・・」

 3千円を人民元に替え、街中をうろついていると、多数の女性が声を掛けてくる。 彼女ら自身が街娼というわけではないが、 売春宿に私を斡旋しようとしているようだ。 周りの警官は見て見ぬ振りというか、警官自体の存在が無視されているというか。
 しかし、仮にも社会主義国・中国のメインストリートで、白昼堂々と売春組織が活動しているとは・・・  自由な香港の方が治安がしっかりしているってのも、不思議な気がする。
 そういえば、香港で男性が「深センに遊びに行く」といのは「女を買いに行く」のと等しいと書かれた記事を、 以前に読んだことがあるが、まんざら、オーバーな表現ではないのかも知れない。

 大通りを北上すると大きな陸橋が出現した。 陸橋の上には多くの露天商がいて、屋台街のような雰囲気だ。  と、前の女性が急に少年の手をはたく。 どうやら少年は女性の鞄の中から金品をスろうとして、未遂に終わったようだ。
 イスラム帽を被っているのでウイグル系であろうか、あどけない表情ながら、悪びれず次の獲物を狙わんとしている。  日本では衝撃的な少年犯罪の現場というところだろうが、ここでは日常的風景のようにも思える。  中国社会の抱えている歪みや病巣は根深いものがあるのだろう。

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 陸橋を超え、さらに北上していくと、大きなショッピングセンターにぶち当たった。  回りには、美味しそうな屋台が数件。 キップの良さそうなおばちゃんがいる店に入ると、入り口では何やら土鍋がぐつぐつと・・・  また、調理台には白い巨大な羊羹のようなものが乗っており、これを包丁削ぐことで、平らな米麺を作っているようだ。
 この麺でできた焼きそばと土鍋を、ボディーランゲジーで頼んだは良いが、やはり、ここは冷たいビールをグっといきたいところ。  日本式に「ビール」といってもおばちゃんはきょとんとしている。 「ビア―」と言ってもだめ。  筆談を試みる。「麦酒」と紙に書いても全く通じない。 最後に「青島」と書くとおばちゃんは大きく頷き、 ギンギンのビールを持って来てくれた。

 大盛りの焼きそばを平らげると、私の前には問題の土鍋が。  中には、ぶつ切りにした淡水魚っぽい白身の魚を、ピーマンとニンニクで煮た物が入っている。  煮えたぎる土鍋は強烈に熱いが、味は極めて美味しい。 残念ながら大盛り焼きそばとビールでパンパンになったお腹では、 この土鍋料理を半分も平らげることはできなかった。
 料理を残すのは決して不味かった訳ではないと、必死におばちゃんに説明している姿を見て、女子高生らしき一団に 笑われてしまった。 おそらく日本人の律儀さを滑稽に感じたのかも知れない。
 しかし、こちらに来て違和感を覚えるのは、みんなご飯を残すことですだ。  日本人の道徳感として、ご飯を残すことは一種の罪悪感を感じる私だが、彼らにはそれは理解できないかも知れない。
 文化の違いがあるとはいえ、この点に関しては、日本人に生まれて良かったと感じる。

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 街中を散策すると、あちらこちらに足底マッサージ店の看板がある。  イギリス領時代のリフレクソロジーの影響だろうか、香港にも足底マッサージがあるのだが、香港の人々はわざわざ深センに 入境してまで、マッサージを受けに来るらしい。 それ程安いということだろう。  その内の一店に入ってみると、小さな入り口からは想像付かないほどの広い店内に、百名以上の客がマッサージを受けている。
 私をマッサージしてくれるのは、若いおにいちゃん。 少し懐かしいが笑っていいともに出ていた工藤兄弟に似ている。  マッサージ師は全て若い男女で、隣でマッサージしている女の子はルーズソックスと厚底サンダルだ。  どこかのビジネス誌の記事で読んだ「厚底文化圏」というのは笑えるところだ。
 客のほとんどは香港人らしい。 隣の香港人の客を通訳として、彼とコミュニケーションを取った。  真面目にマッサージをしてくれたのだが、促成教育されているのか、いまいち気持ちは良くない。

 マッサージを終えて店を出ると日はかなり傾いている。 商店を見てみるが、香港と品揃えはほとんど変らない。  本当に深センは香港以上に混沌としていて、掴みどころがない。 中国4千年云々というのもの全く感じられない。
 土産にとお茶の店に入ってみると、数十種類ものお茶が並んでいる。 薔薇のつぼみだけで出来たお茶と、プーアール茶を 購入して、深センから退散することにした。
 帰り道にあった屋台で、牛肉麺と青島ビールを夕食を済ませる。 これもなかなかいける。 食事に関しては本日はヒット連続だ。

 帰りの深セン側の出境ゲートは香港人用とその他外国人用で階が分かれている。 香港人用ゲートには長蛇の列であるが、 その他外国人用はガラガラである。
 二人組の女性がここで良いのかと、私に話しかけてきた。 赤いパスポートを持った私を同じ国の人だと勘違いした彼女らは、 シンガポール人であった。 二人ともOLらしく推定だが30歳前後というところか。 ノリの良い一方の女性が食いついてくる。
 「昔、シンガポールには行ったことはあるよ。オムニマルコポーロホテルに泊ったけど・・・」
 「あのホテルはもう潰れてしまったわ。」 と他愛のない世間話を交わす。
 「私たちは、ヨーロッパもアメリカも行ったことがあるけど、日本に行くのが夢なのよ。」 彼女は本当に日本に憧れを持ってるようだ。  あまり夢を壊す発言は控えることにして、「日本に来るときには大阪にも寄ってね!」と言っておいた。

 香港の入境と九広鉄道の間の大混雑で、二人組みのシンガポール女性とははぐれてしまった。  帰りの鉄道での楽しい会話を期待していたが、少し残念である。  今日は香港最後の夜である。 九龍塘駅から地下鉄で旺角駅まで行き、名残を惜しむように香港の夜を徘徊した。


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