トンレサップ湖(シェムリアップ)へ
4時前にパトゥポーン(Pathoumphone)を後にする。 夜間は門が閉まっているが、入り口のソファーに寝ていた若い男性が門を開けてくれた。
人が少ないヴェインチャンの、しかもこんな早朝にトゥクトゥクが捕まるか不安だったが、すぐに杞憂であったと気付く。
辺りにはトゥクトゥクの運転手が仮眠している。
ワッタイ空港までの交渉で、最初の1台は5ドル、2台目は2ドルの提示。 結局2ドルで手を打つ。
今日は、早朝6時発のラオス航空国際便で、カンボジアのシェムリアップに向かう。
こんな早朝には当然食堂も開いておらず、ラオス料理の食べ納めも叶わない。
未練がましく、免税店でビアラオの6缶パック(3.5ドル)を購入する。
国際線も国内線と同じ機体(ATR72)、どう考えても国内線、国際線を使い回している。
早朝にも関わらず機内は満員。 さすがは世界的観光地シェムリアップへの国際便だ。
ルアンパバーンとの国内便では、機内サービスはミネラルウォータのみだったが、流石に国際便では機内食が・・・
まぁ、昔ながらのコッペパン1つとコーヒーだけでも、無いよりは随分マシだ。
約1時間飛行すると、機体はラオス南部の町パクセーに着陸した。 乗客はぞろぞろと降りていく。
空港見学かと思いきや、ほとんどの乗客が降りてしまった。
つまり、この便は国際線と、ヴィエンチャン/パクセー間の国内線を兼ねており、ほとんどが国内線利用の乗客なのだ。
結局、残された20名弱の乗客とともにATR72はシェムリアップに向けて飛び立った。
この区間ではじめて正式な国際線になったのか、豪華?カツサンドの機内食が出た。
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一面緑の海であったラオスの景色から一変して、カンボジアの景色は赤土色が目立つ。 田畑が多いということなのか、
それとも雨季による増水の影響なのか・・・
到着したシェムリアップ国際空港(Siem Reap Airport)は、かなり小奇麗な空港である。
カンボジアに関する先入観として、国の体をなしていない、無法地帯のようなものを想像していたのだが、
係員や空港職員もキビキビしていて、接客もなかなか良い。
カンボジア国民には失礼ながら、「カンボジアってまともな国なんだぁ」と変な関心をしてしまう。
ホーチミン発のシェムリアップ航空の便と同着となり、多くの日本人観光客が降りてきた。
比較的若い学生風が多い事に、何となく嫌な予感を感じる・・・
カンボジアはビザが必要であるが、ここシェムリアップ国際空港で到着ビザが取得可能である。
申請フォームに20ドルを添えて提出すると、ものの5分くらいで簡単にビザが発給される。
前に並んでいたアホ面の若い日本人男性2人組みが、何やらビザ発給担当官と揉めている。
どうやら、ビザ申請フォームに必要な写真を忘れたらしい。
係員は、写真が無ければ5ドルの追徴料金が必要だと言っているのだが、彼らは逆ギレ気味に支払いを拒んでいる。
そもそもビザ申請が必要なのは分かりきった状況で、写真を持ってこないのは明らかに非があるのだから、
末端の係員に入国ルールに関するクレームを付けてみても、何の解決にもならないじゃないだろうか。
カンボジア入国を認めてもらう立場をわきまえていないというか、カンボジアという国家を侮辱しているというか・・・
「日本の恥を晒さないで!」と願うのは私だけではあるまい。
現地通貨のリアルをGETする。 ラオスやベトナムと同じく、ここカンボジアでも米ドルがそのまま流通しており、
ほぼ固定レートで運用されている。
1ドル = 4000リアル
ラオスからカンボジアに入った時にはこのレートの違いが曲者である。 というのも、ラオスでは1ドル=10000キップだったので、
リアルはキップに比べて2.5倍の価値がある。 キップの相場に頭が慣れている時点では、物価が急に安くなったような錯覚に陥るのだ。
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空港を出ると町へのチケットカウンターがあり、タクシーなら5ドル、バイクタクシーなら1ドルのチケットを購入する。
運転手は整然と並んでいて、チケットを買うと係員が順番に運転手を割付けていく。 ホーチミンあたりだと運転手が群がって来て、
ウザい思いをする状況であるが、ここシェムリアップでは観光客へのイメージを大切にしているのだろう。
バイタク運転手にタケオゲストハウスに行ってくれと頼む。
ルアンパバーンで会ったメグさんが勧めてくれた宿が、このタケオゲストハウスである。
(名前の由来はキクチタケオではなく、タケオ遺跡から来ているようだ・・・)
日本人旅行者の溜り場になっている他、レストランでは日本料理を出すので、地元在住の日本人も多く訪れるらしい。
ネット情報でも「シェムリ初心者はタケオに行け」というのが定説であるようだ。
バイタクの運転手は「タケオはオールドマーケットが遠いから不便だ。俺が良い宿に連れて行ってやる。」としつこいが、タケオ行きを押し通す。
空港から東に伸びる国道6号線を進んでいくと、新しいホテルの建設ラッシュのようだ。 さすがは世界的な観光地だ。
タケオゲストハウスも同じく国道6号線沿いにあり、入り口には分かりやすくカタカナの看板が設置されている。
日本人個人旅行者の巣窟と聞いて、香港のラッキーハウスのような小汚いものを想像していたのだが、
実際のタケオは予想に反して非常に新しくて綺麗な建物だ。
ホットシャワー付きシングルルームは、部屋もベッドも大きく、天井も高い。 シェムリアップのホテル相場は分からないが、
客観的に見て、この部屋で6ドルという値段では文句の付けようがない。
タケオの入り口にある食堂で腹ごしらえをする。 ほとんどが日本食のメニューであり、しかも日本語で書かれている。
高菜チャーハンと、カンボジアのナショナルビールである、アンコールビールを頼む。
微妙な味の違いはあるが、高菜チャーハンの再現度はいい線をいっている。
アンコールビールの方はと言うと、これがなかなか旨い。 ビアラオのすっきり感と、日本のビールの切れ味の中間くらいといった感じか。
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タケオでレンタルサイクル(1ドル/日)を借りる。
タケオの東にある交差点を道を北に進めばアンコール遺跡群、南に進めばトンレサップ湖に到達できる。
高額な入場料が必要なアンコール遺跡群は、明日一日かけてじっくりと回るとして、
本日午後はトンレサップ湖の探索に出かけることにする。
シェムリアップ川沿いに10分も走ると、あたりはすっかり田舎の風景になる。
増水時への対策なのか、葦のようなもので造られた高床式の住宅が並んでいる。
だんだんと視野が広がり、周りには湿地帯が増えてきた。 いつの間にかトンレサップ湖に入った模様。
道路の突き当たりには、小高い山が見えてきた。 この小山の周りに集落が広がっているようだ。
突然の闖入者にも、彼らはフレンドリーに手を振ってくれる。
なんて平和な風景なのだ・・・
今、彼らが平和を享受できている状況は、選挙監視員ボランティアの中田厚仁氏、平和維持活動の高田晴行警視をはじめとした、
貴重な命の犠牲の上に成り立っているのだ。
彼らの冥福を祈るとともに、日本人として彼らを誇りに思うべきであろう。
小山の反対側まで行くと、ようやく湖らしい雰囲気になってきた。
湖から来る風が心地良い、というよりもかなり激しい。
トンレサップ湖(Tonle Sap)は東南アジア最大の湖であり、シェムリアップとカンボジアの首都であるプノンペンとの間に横たわっている。
湖岸にはプノンペン行きの高速船乗り場が多数存在しており、陸路よりも一般的な移動方法らしい。
つまり、ここはカンボジアの一大交通要衝であるといっても過言ではない。
プノンペン行きの船以外にも、トンレサップ湖周遊の遊覧船も多数就航しており、船着場はとても賑やかだ。
遊覧船に乗りたい気がしなくも無かったが、一人で乗るには高そうなので断念した・・・
往路でも気になってきたのだが、トンレサップ湖への道すがらに、湖上コテージのようなものが点在している。
どうやら湖上レストランのようだ。
葦ぶきの床にゴザを引いて座っても良いし、ハンモックに寝転んでも良い。 隣では先客が輪になって宴会をしている。
迷うことなく、ハンモックに横たわり、氷入りアンコールビールをやる。
横目でトンレサップ湖を眺めながらの、しばしの昼寝。 湖からの風がとても心地よい。
極楽というものは金の有無ではないんだなと、改めて思う。
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タケオゲストハウスに帰着後、夕飯のために町に繰り出す。
夜のシェムリアップも、さほど治安が悪そうではない。
ルアンパバーンのメグさんに教えてもらった、「モロッポーカフェ」という店に行ってみる。
外観も内装も極めてお洒落なカフェである。 料理は日本食中心、というよりも、この店は日本料理店のようだ。
しかも、だいたい1皿1ドル前後のリーズナブルな価格である。
豚カツとマーボー豆腐にご飯(おかわり自由)を頼む。 久しぶりの本格和食で美味しかったのだが、
カンボジアまで来て和食三昧というのも如何なものかと、自問自答する。
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